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松井稼頭央が何度も「あと1本が出ない…」打率ダントツ最下位、西武ライオンズ「若手打者が育っていない問題」 打撃コーチは「難しいこと言ってないので」
text by
中島大輔Daisuke Nakajima
photograph byJIJI PRESS
posted2024/06/05 11:02
松井稼頭央監督が今季、苦しめられ続けた「貧打」。過去には強力打線を形成した西武が、今の状態に至ったのは、構造的な要因もある
「相手からすれば、追い込んだ後は簡単です。だから『ファーストストライクからしっかり打っていこう』と常々話しています。追い込まれたらどうするか。ちょっと代わりに(短く)持って、みんなで何とか束になって粘り、ピッチャーに球数を投げさせる。そうやりながら選手は成長していくものだと思うんですよ。僕もそうでしたし」
広島時代の2004年に首位打者を獲得した嶋コーチは現役時代、打席で工夫を重ねるなかで一皮剥けることができたという。
「いろんな空振りをしながら、その球を見逃せるようになったり、ファウルにするようになったりとか読みが出てくる。相手のことを感じられるようになってほしいんですけどね。監督は『ミスを恐れず、どんどんアグレッシブに行こう』と言ってくれているので、『だったら、思い切っていくべきだよ』という提案はしています」
相手の嫌がる選手を育てられていない
あと1本が出ない……。
松井前監督が何度もこぼしたセリフだ。
嶋コーチも指摘するように、選手たちは「自分のバッティング」や「強く振ること」に捉われすぎるあまり、状況や相手の攻めに応じた打撃をできていない。それが「あと1本が出ない」一因ではないだろうか。
翻って球団の視点から見ると、選手たちの良さを伸ばそうとする一方、個々のタイプに応じ、相手の嫌がる選手を育てられていない。
以上が近年の「若手の伸び悩み」につながっていると考えられる。
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プロ野球の一軍は本来、選手を育てる場所ではない。当然、西武の首脳陣もよくわかっている。
だが、FA選手の引き留めと世代交代がうまくいかずに誕生した“松井ライオンズ”は、明らかに一軍の戦力が足りなかった。
特に思い出されるのが昨季、中村剛也が故障、山川(現ソフトバンク)が女性スキャンダルで離脱、新外国人のマーク・ペイトンが不振で二軍落ちとなったシーズン序盤のことだ。
2020年ドラフト1位の渡部健人や同4位の若林楽人、同育成2位の長谷川信哉らを抜擢するも、いずれも期待に応えられずにいた。
果たして、打順を試行錯誤していた首脳陣はどういう考えで戦っているのか。24勝31敗で5位に沈んでいた2023年6月9日の試合後、平石洋介ヘッドコーチに率直に問うと、必死の形相でこう答えた。