近鉄を過ぎ去ったトルネードBACK NUMBER
野茂英雄は「もう日本に帰れない」「危険な賭けだ」メジャー挑戦表明に日本球界から悲観論が噴出…ドジャース・野茂フィーバー前史
text by
喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byMasato Daito
posted2024/06/02 11:00
空港を歩く野茂英雄。今から29年前、野茂の渡米には日本球界から悲観的な見方も多くなされた
野茂、無謀な挑戦 自ら退路を断つ形に
そうした論調に乗って、金井の説明の言葉を借り、野茂への批判と将来への悲観論という文脈に当てはめていくと、新聞紙上では連日のようにこんな見出しが躍ることになった。
「野茂はわがまま」
「代理人は動けず、近鉄もUターン許さず あぁ八方ふさがり」
「野茂、無謀な挑戦 自ら退路『日本復帰』断つ形に…」
さらにはシアトル・マリナーズが、メジャー表明前の野茂に接触していたのではというタンパリング疑惑も浮上した。1994年の年末、マリナーズのトレーナーと野茂が偶然、一緒になったという事実はあったというが「疑えばキリがない。それでも、状況証拠がいろいろあったとしても、契約の話はしていないと言われればそれまで」と金井が一連の経緯を説明してくれたのは1月18日のこと。また、1月12日にはマリナーズから野茂の身分照会があり「1月9日付で任意引退選手となり、近鉄球団は同投手と大リーグ28球団との交渉を許可しました」と回答したことも金井は同日に明らかにしている。
そして行われた2人の会見
事態が不透明な中で、野茂と団野村は1月18日にそろって東京都内で会見を行った。
<つづく>