濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「あの事件で、女子プロレスが野蛮だと…」明かされる“喧嘩マッチ”の舞台裏…映画公開でも話題の岩谷麻優は「ズタボロの時期」を乗り越えて
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2024/05/17 12:05
“スターダムのアイコン”岩谷麻優。5月17日より、モデルとなった映画『家出レスラー』が公開となる
昨年12月には新社長が就任。2月に小川氏の契約解除、3月は5人の選手が退団した。さらに小川氏の新団体旗揚げが発表され、スターダムも春から新たな出発。創業者のいない新体制だ。『家出レスラー』は、そういう時期に公開されることになった。
「いる人間が変わっても、ドラマを見せるのがスターダム」
偶然ではあるが、それも意味のあることなのかもしれない。スターダムは、まさにリスタートの時期にある。だからこそ「いろんなことを乗り越えた」歴史を振り返るのは悪いことではないだろう。
「最近ファンになった人たちは知らない頃の話が映画になったんですもんね。中には自分しか見てない、表に出てなかった場面もあって。不思議な感じがしますね。最初は手作り感満載だったんです、スターダム。遠征の時はみんなでグッズとか荷物を車に載せて、小さい車で移動して。なんでも選手、スタッフみんなでやったんです。
今は試合に集中できるし、いいお給料をもらえるようになりました。でも、お金のためだけでやってるわけじゃないっていうのは昔と同じですね。みんな頑張ってるから、そこにいろんなドラマが生まれるんです。だからお客さんに熱中してもらえる。いる人間が変わっても、そのドラマを見せるのがスターダムなんだと思います」
誰よりもプロレスを楽しんで
現在、岩谷はIWGP女子王座を保持。朱里、Sareeeとの防衛戦は名勝負となった。新たなスター候補が次々と登場するスターダムにあって、岩谷にしかできない試合、岩谷にしか作り出せない空気があるのは間違いない。団体旗揚げ戦でのデビューから13年あまり、現在も「めちゃくちゃ調子がいいです」と言う。
5月18日のビッグマッチでは、過去に因縁のある他団体の藤本つかさ&中島安里紗と対戦。パートナーは19歳の新鋭・羽南だ。トップ選手に混じって、成長著しい羽南がどんな暴れっぷりを見せるかも試合のポイントになるだろう。次世代を育てるという意味もあっての羽南抜擢なのか。そう聞くと、岩谷はあっけらかんと答えた。
「育てる気持ちもありますけど、まず大事なのは自分ですね(笑)。自分が目立ちたいって気持ちが一番です」
それでこそ、と思うファンは多いだろう。団体が大きくなっても、半生が映画になっても“ベテラン”として一歩引くつもりなどまったくない。誰よりもプロレスを楽しんでいるのが岩谷麻優なのだ。