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「天性のアイドル力を持っている」美術学生→新人女子プロレスラーに…中野たむも絶賛する玖麗さやかのポテンシャル「応援したくなるんですよ」
posted2024/05/19 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Essei Hara
昨年、女子プロレス団体スターダムから5人の新人がデビューした。今年に入ってからも1人デビュー。1人は退団したものの、彼女たちの出世争いは大会の“見もの”の一つになっている。
新人たちのほとんどにバックボーンがある。さくらあやと八神蘭奈は空手、HANAKOは学生プロレス出身だ。だが、八神と同日、昨年12月25日にデビューした玖麗さやかにはそれがない。スターダムに入門する前、彼女が志していたのは絵画だった。
出身は愛知県豊橋市。美術系の高校に通い、上京したのも美術の勉強をするためだった。専門は油絵だ。部活動はブラスバンド。スポーツとは無縁に生きてきた。
かつて怖かったプロレスに惹かれた理由
そんな人生が一変したのが2022年だった。9月、知り合いに誘われてスターダムを観戦する。
「プロレスは怖くて見たことがなかったんです。でも実際に見てみたら“私もこの人たちみたいになりたい”って。何かが降りてきた感じですね。選手がみんなキラキラしていて、同時に泥臭い。こんなに面白い世界があるのかと思いました」
9月に初めてプロレスを見て、10月1日にはリーグ戦「5★STAR GP」決勝大会の会場へ。決勝戦はジュリアvs.中野たむだった。感動のあまり帰りの電車の中で新人募集に応募する。「まだスターダムの選手全員の名前も知らなかったんですけど」。
年が明けて3月に入門。ただでさえ練習は厳しい。スポーツ歴のない玖麗にはついていくだけでも大変だった。
「基礎がないし技術も知識もなくて、人より抜きん出る以前の問題で。置いていかれないようにするので必死でした。周りと同じレベルで練習できるように、みんなが見てないところで“コソ練”してましたね。頑張って練習してるみたいに見られるのも恥ずかしかったんです。みんなができてることができないと思われるのが悔しくて」
初勝利は“相手の反則負け”
もともと頑固で負けず嫌いと言われていたそうだ。「プロレスを始めて、自分でもそれが実感できました」と玖麗。昨年12月にデビューしてからも苦闘が続き、だからこそ負けん気を刺激された。初勝利はトップヒール・刀羅ナツコとの試合。いいようにやられて、結果は相手の反則負けだった。勝った実感など何もない。
「これが私の初勝利……」