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「僕には直球しかありませんから」大谷翔平に打たれた菊池雄星が、それでも満足していた理由…MLBでも“ツーシームを使わない”鉄人の自信
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byGetty Images
posted2024/05/11 11:03
直球を信じ、MLBの舞台で“力勝負”を続けるブルージェイズの菊池雄星
中4日でも怪我をしないための“ルーティーン”
狙いは怪我の回避、健康維持。投手の仕事というのは過酷だ。自分の体を代償とする投球動作は負傷が絶えない。それでも、中4日の先発を続ける菊池の体はこれまで異常を訴えたことがない。それはなぜか。彼に聞いた。
「シーズン中のトレーニングは体調、筋量のキープしかできないですからね。あくまでも落ちないように頑張るというだけです。僕は幸運にも怪我をしたことがない。大事なのは睡眠と栄養。トレーニング量もありますけど睡眠と栄養が一番大事です」
バランスと規則正しい食事に加え最低でも8時間以上の睡眠、できれば9時間、10時間は欲しいという。同時に気を遣っていることがある。現代人の必須アイテムに関することだ。
「テレビを見過ぎない。デバイスを控える。パソコンや携帯を見過ぎないように気をつけています。光の情報は神経系に良くないので携帯はなるべくいじくらない。そういう細かいところに気を遣っています」
携帯やタブレットでのゲームは今やメジャーリーガーの息抜きの大きなひとつだが、菊池は極力遠ざけている。幸運か、ゲームはもともとしない。大好きな読書も実際に本を手に取り読んでいる。「睡眠、栄養、デバイス削除」。これが菊池流・中4日の大原則だ。
「僕は不器用」菊池がツーシームを投げない理由
ブルージェイズのジョン・シュナイダー監督は鉄人菊池の安定した投球を讃えている。
「彼はプロフェッショナル。自己管理も徹底している。その中で安定した投球で我々のローテーションを支えチームの勝利に貢献してくれている」
ここまでの成績は2勝2敗も防御率は2.72と安定。奪三振率9.8は今永の9.3を上回る。そんな菊池だが、これまでは決して順風満帆ではなかった。先発として不安定な時期もあり、マリナーズ時代もブルージェイズ移籍後も先発の座を奪われ、中継ぎに配置転換された。その都度、周囲から指摘された同じ言葉もあった。
「ツーシームを覚えろ。左打者の内角にも右打者の外角へも有効だ。ツーシームがあれば打者は考え、意識する」
しかし、菊池は決してその言葉に首を縦に振らなかった。
「器用だったらツーシームとかいっていたかもしれないけど、僕は自分が不器用なのを知っているので。僕には直球しかなかった。自分の得意なものを磨くしかなかった。それしかできないから腹を括っただけなんですよ」