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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「今の若い選手には結果が足りない」上野由岐子が初めて語った“レジェンドの引き際”…45歳で迎えるロス五輪へ「選手で行くのか、指導者という形か」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakuya Sugiyama
posted2024/05/10 11:06
7月には42歳となる上野。ソフトボール界のレジェンドはまだまだ輝き続ける
未来の「指導者」として
――楽しみが広がっているような感覚でしょうか。
「色々な道を選べるように、自分もしっかり準備をしなければいけません。選択肢を持つには準備がすごく大事。選手としてやれるならその準備をしなければいけないし、指導者としてやるのだったらそのために今から準備していく必要があります。今は、どちらの立場でも関われるように準備をしたいと思っています」
――指導者を現実的な選択肢として考えているということは初めてお聞きしたように思います。
「でも、もしかしたら全く関わらないという選択肢も現実的にはゼロではないと思います。どの道にも転べるように準備をしておきたいですし、その選択肢は神様が誘導してくれるのかなという感覚です。神様が“選手の立場でもっと頑張れ”と言ってくれるのだったら、私の体もその年まで持つでしょうし、“お前はこっちの世界に行け”と言われた時には、体が持たなかったり燃え尽きてしまっていたりして、違う形でオリンピックを迎えるかもしれません。そういうことも、気持ちの中ではしっかり準備しておきたいですね」
――指導者としての準備という意味では、監督目線でソフトボールを見るようになっているのですか?
「もちろんです。宇津木麗華監督が全日本でどういう采配を振っているのか、なぜこの選手を選んだのかということも、自分自身の中で考えられるように意識しています」
「神様がまだやめるなと」
――21年に行われた東京五輪の後、いわゆる引退ということも考えたことはあるのでしょうか?
「そうですね。投げることのできなかった22年の1年間がなければ多分やめていたと思います。あの1年があったので、自分の感情が180度変わりました。神様がまだやめるなって言ってくれたんだな、と私の中では受け止めています。投げられない時間があったからこそ、見えていなかった景色が見えてきたのだと思います」
――ソフトボールへの関わり方についての考えが広がっているということですね。
「どういう形でもソフトボールに恩返しをしなければいけないとは思っています。そういった意味では年齢的にも幅広いものが見えるようになって、心にも余裕が持てるようになってきているので、色々な道を自分で選択できるように準備だけはちゃんとしておきたいなと思っています」 〈前編も公開中です〉