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「五輪への思い? うーん、あまりないです」松山英樹は本音をぶっちゃけてたけど…ゴルフ五輪代表争いが熾烈「男子ほぼ残り1枠」「女子は大混戦」
posted2024/05/03 06:02
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Katsuragawa Yoichi
ツレないというか、いやいや、心底正直というべきか……。
2024年のメジャー初戦、マスターズ。ことしも熱戦の様子をお茶の間に届けたTBSのインタビューの最中、少しばかり冷え込んだ(ように思えた)一瞬があった。
思うようにプレーできないまま、ため息交じりに言葉を並べていた松山英樹。自身への期待を裏切るような4日間を受け止め、つとめて冷静に振り返っていたその時、ひとつ質問が飛んだ。
「松山さんがオリンピックに懸ける思いというのはありますか?」
もちろん、時と場所を考えれば、いささか唐突ではある。それでも、松山の素直すぎる返しには少々面喰った。「うーん、あんまりないです」
海の向こう、画面の前に控えし多くは、五輪こそ紛うことなき世界イチのスポーツイベントと疑わない日本国民である。インタビュアーがPGAツアーの気心知れた大先輩であり、想いを共有できる今田竜二だったから、本音をチラリとのぞかせるどころか、ズバーン!とぶっちゃけられたのかもしれない。おあつらえ向きなコメントは、心になければお断り。まあ、そこんとこブレないのが松山英樹らしくもある。
五輪を自分事として捉えられなかった理由
確かに、松山にとっての五輪メダルは、必ずしもキャリアのプライオリティの上位になかった。ゴルフが正式競技に復帰した2016年のリオデジャネイロ大会は出場を辞退。マスターズ制覇から約4カ月後の21年東京では、銅メダルを争うプレーオフで敗れ、余韻もそこそこに週末にはテネシー州に飛び主戦場で優勝争いを演じた。
そして、パリだ。
首や背中、手首などの故障に苦しめられた松山は、一昨年の春からは万全の状態でプレーするのにも苦労してきた。とくに昨季は、結果で言えばPGAツアーで自己ワーストの一年を過ごしたのを忘れてはならない。だから今年の初め、五輪イヤーを迎えてもまだ、メダルへの道は自分事として捉えられなかったのではないかと想像している。
少なくとも2月、ロサンゼルスでジェネシス招待を勝つまでは。