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「マニアを相手にするのではなく…」TAJIRIが語る九州プロレスの“常識を覆す”経営論…元WWE戦士が“プロレスNPO”所属を選んだ理由
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2024/04/28 17:03
九州プロレスに所属するプロレスラーのTAJIRIにインタビュー
海外から練習生の問い合わせが殺到した理由
こうして草の根的にプロレスのおもしろさを一般層に広めている九州プロレス。TAJIRIはここで所属選手としてリングに上がるだけではなく、選手育成にも努めている。その対象は日本人の若手レスラーだけではなく、広く海外から募っている。
「九州プロレス入団会見をやったとき、『外国人の練習生を募集します』ってSNSを使って英語で発信したんですよ。そしたら収拾がつかないくらい問い合わせが来て、それが未だに続いているくらいなんです」
海外のプロレスラー志望者にとって、日本は「プロレス先進国」。その日本で、元WWEスーパースターTAJIRIの直接指導を受けられるということで、応募が殺到しているのだ。
「あと、海外の若いプロレスラーが日本に来たがるのは、安く来られるからです。インバウンドの旅行者が多いのと同じです。外国に行けばわかりますけど、いまの日本って諸外国と比べてすごく貧しいんですよ。だから海外の人からすると、ものすごく安く感じる。しかも日本のとくに地方だと、滞在費も食費も安いので、そういう意味でも東京ではなく九州でやるのはアドバンテージになっているんです。ここでプロレスを学んだ選手の中から、いつか世界的な大物になるヤツがいるかもしれない。そういうネットワークものちのちすごく大事になっていくと思いますね」
目標は、福岡PayPayドーム興行
TAJIRIにとって九州プロレスは、52歳にして出会った理想のプロレス団体。ここで、これまで自分が培ってきた知識と経験を活かして、プロレス人生の最後を締めくくりたいと語る。
「とりあえず今の目標は、2028年に九州プロレスを福岡PayPayドームでやろうとしているんですよ。そのあたりが一つの目安になるのかなと思っています」
福岡ドームはあまりにも大きなハコであるが、九州プロレスはそこに向けて着実に歩みを進めている。
「僕は50歳すぎてから九州プロレスに出会えてラッキーでしたよ。人間、長生きできてせいぜい80歳や90歳まで。時間はあるようでない。悔いなく生きるためにも、九州に来られて本当に良かった。だから若い人たちには、好きなように生きてほしいですね。今回出した『真・プロレスラーは観客に何を見せているのか』には、ここで語ったことのさらに深いことや、SNSとプロレスの歪んだ関係性、誰も言語化したことのないプロレスがうまくなるためのコツ、都市伝説的なプロレス噂話の真相など、さらには自分の経験を通した『どう生きるか』などについても書いているので、ぜひ、読んでみてほしいと思います」