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「マニアを相手にするのではなく…」TAJIRIが語る九州プロレスの“常識を覆す”経営論…元WWE戦士が“プロレスNPO”所属を選んだ理由
posted2024/04/28 17:03
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
Gantz Horie
この春、プロレスラーTAJIRIの話を聞くために九州・福岡を訪れた。
TAJIRIといえば、2001年から約5年間にわたって世界最大のプロレス団体であるアメリカのWWEで活躍した“元メジャーリーガー”。帰国後はハッスル、新日本プロレス、全日本プロレス、WRESTLE-1など、日本でメジャーにカテゴライズされる団体で活躍。さらにSMASH、WNCという団体を旗揚げしプロデュースも経験した。
また近年は執筆活動にも力を入れており、プロレス論を記した著作だけでなく、世界中のプロレスを求めて旅したエッセイや小説も執筆。今年3月にはその集大成とも言える『真・プロレスラーは観客に何を見せているのか』(徳間文庫)を出版し「文豪レスラー」の異名を持っている。
そんなTAJIRIは昨年、東京から福岡県に移住しローカル団体「九州プロレス」の所属レスラーとなった。日米のメジャー団体を渡り歩いたTAJIRIがなぜ地方に移り住み、ローカル団体に所属する道を選んだのか。それを知るべくTAJIRIの住む福岡の郊外の町を訪れ話を聞いた。
「世界一素晴らしいプロレス団体」
「地方に引っ越そうと思った最初の理由は、簡単に言えば『東京より地方のほうがいいな』って、前に所属していた全日本プロレスの巡業でいろんなところに行くたびに思っていたんですよ。まず、ストレスがないですよね。あとはすでに東京でほしいものはなくなってたんで、むしろ地方のほうがほしいものや環境が揃ってたんです。海、山、美味い食い物があって、人もギスギスしてない。これはどう考えても東京にいる理由はないなって思いましたね」
もともと地方住まいに魅力を感じていたというTAJIRI。そこから九州移住を決意させたのは、九州プロレス代表の筑前りょう太との出会いだった。
「筑前さんと話をしてみて、すごく相性が良かったんですよ。これまでのプロレス界は、なんか僕の考えてることを理解しようとしたがらない人ばっかりでしたけど、筑前さんは誰のどんな意見にもしっかりと耳を傾けてくれます。しかも、筑前さんの考えてることと僕の考えは似通っている部分が多かったんですね」
筑前りょう太は、’97年に24歳で単身メキシコに渡りプロレスラーとしてデビュー。2000年に帰国後はルチャ・リブレ系のインディー団体で活動した後、’02年からは星野勘太郎率いる魔界倶楽部に加入し、マスクマンの「魔界2号」として新日本プロレスにレギュラー参戦した経験もある。その後、’08年に九州プロレスを立ち上げ、今年で16周年を迎える。
TAJIRIはこの九州プロレスを「僕にとって世界一素晴らしいプロレス団体」と評する。
「九州プロレスは、他の団体とはまったく構造が違うんです。まず営利企業ではなく『プロレスでまちおこしをする』ことを目的としたNPO法人。そしてレスラーに1試合ごとのギャラを払ったり、選手契約するのではなく正社員として雇用して、厚生年金もあれば退職金もある。こんな団体ほかにないですよ」