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「イノウエはアメリカで戦え」井上尚弥vsネリ直前に賛否両論…米国メディアの本音は?「残念だが時代は変わった」「パッキャオになりたければ…」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/04/26 17:04
5月6日ルイス・ネリ戦に向けて準備を進める井上尚弥
かつてボクシングの本場といえば、アメリカという時代が続いた。特にラスベガスのリングで戦うことこそが多くのボクサーの目標であり、実際に井上も2020〜21年に2度、ベガス進出を果たしている。
ただ、ボクシング人気そのものの停滞と動画配信の浸透が重なった影響から、レイフィール、ジッテル両氏の言葉通り、米リングの影響力には明白な陰りが見られる。昨年以降、ヘビー級ビッグファイトの大半がサウジアラビアに流失しているのはファンならご存じの通り。時を同じくして、もともとアメリカでは人気とはいえない軽量級の重要試合は日本が拠点として確立されている。
だとすれば、“アメリカ絶対”というポーター氏の理論にはやはり無理がある。より多く稼げる土壌が他国にあるのであれば、そこで戦うのは当然。井上のように母国で絶対的な人気を誇り、報酬にも恵まれ、対戦相手もこぞって日本行きを望んでいるのであれば、現状での米リング登場は理にかなわない。
“ボクシングの顔”になりたいなら
もちろんあくまで今後に向けた投資の意図も組み入れるのなら、アメリカ再進出に意味がないとは思わない。インパクトが低下傾向だとはいえ、今でも米リングには一定の影響力はあるからだ。
ポーター氏の言葉をよく聞くと、「井上が“the star(最高級のスター)”になりたいのであれば」という形容をしている。「スターの1人ではなく、パッキャオやフロイド・メイウェザーのような“業界の顔”になりたいなら」という意図がそこにあったのだとすれば、その意見にも一理あるのは事実である。ジッテル記者もその点は理解しており、こうも述べている。
「世界ボクシングの顔となった選手で、アメリカで定期的に戦わなかった選手は思い浮かばない。マニー・パッキャオ、ロベルト・デュラン、レノックス・ルイス、カネロ、フリオ・セサール・チャベス、フェリックス・トリニダードもそれぞれアメリカを拠点にした。本気で世界の顔を目指すのであれば、依然として米リングで戦うことは助けになるのだろう」