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水原一平スキャンダルに残された「最後のナゾ」…在米税務コンサルタントが指摘する“会計士の正体”「あれでは職務放棄に近い」
text by
奥窪優木Yuki Okukubo
photograph byGetty Images
posted2024/04/18 17:00
元通訳だった水原一平容疑者による巨額の窃盗事件。事態はどんな結末を迎えるのか…?
一方で、大谷にはその多額の収入や資産を管理する資産管理チームが編成されていたことも刑事告訴状に記されている。主要メンバーは、会計簿記係、金融アドバイザーB.L、納税や申告を行う会計士の3人だ。
このうちK.Fというイニシャルで登場する会計士は、水原容疑者が手を付けていたx5848口座について、2022年10月に「口座の資金に利息が生じたり、贈与が行われたりしている場合には誤った税務申告をしてしまう可能性がある」と懸念を表明し、水原容疑者と会合を持って取引履歴を開示するよう求めている。
これに水原容疑者は「大谷翔平はA銀行の口座をだれにも知られないようにしたがっている」「利息も贈与もない」と開示を拒否している。この会合には当初、大谷自身も出席する予定だったが「体調不良により参加できない」と水原容疑者が伝えていたという。
さらにK.F氏は、「大谷選手と会ったのは過去一回だけで、それ以外は(代理人のネズ・)バレロ氏か水原容疑者を介して指示を受けていた」とも証言している。
なぜ会計士は水原容疑者の言葉で引き下がったのか?
会計士という立場にありながら、本人への確認も行わず水原容疑者の一言だけで引き下がるのは、不自然にも思える。地元紙LAタイムズに至っては、こうした資産管理チームを編成させたとみられるバレロについて「解任されるべき」とまで厳しく糾弾している。
ニューヨークに拠点を構える日系会計事務所、ユニヴィス・アメリカのマネージング・パートナーの小林賢介氏はこう実情を明かす。
「おそらく会計士が受任した当初の段階から、『大谷選手に関するやり取りは全て水原氏が代理で行なう』という話になっていたと推察されます。つまり会計士としては水原氏=大谷選手と捉えていたわけです。契約内容が明らかでない以上、断言はできませんが、会計士の業務が個人の税務申告に限定されていたと仮定すると、会計士は監査人と異なり依頼人に雇われている側ですので、依頼人に『これ以上、所得はない』と言われれば、それに従って申告をするのみの対応をとっていたと考えられます。口座へのアクセス権も与えられていない状況だったとすれば、会計士に責任の一端を求めるのは酷だと思います」