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「康太、康太!」亡き藤岡康太の思いがジャスティンミラノを皐月賞制覇に導いた…涙の友道師が明かした“最後の会話”「彼が育ててくれました」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byJIJI PRESS
posted2024/04/15 17:00
無敗で皐月賞を制したジャスティンミラノ。レース後のインタビューで、鞍上の戸崎圭太は「康太が後押ししてくれた」と語った
なんと、1分57秒1というコースレコードの決着だったのだ。ラブリーデイが5歳時の2015年の中山金杯で記録した1分57秒8を、3歳馬が一気にコンマ7秒も短縮したのだから恐れ入る。
首差の2着はコスモキュランダ、3着はジャンタルマンタル。1番人気に支持された牝馬のレガレイラは6着、藤岡佑介のミスタージーティーは10着だった。
「康太が後押ししてくれた」「この勝利は彼のおかげ」
ジャスティンミラノから下馬した直後の戸崎はゴーグルをしたままで表情はうかがえなかったが、出迎えた友道康夫調教師の目には涙があった。
検量室前で行われた勝利騎手インタビューに応えた戸崎の目は赤くなっていた。
「この馬に関して、藤岡康太ジョッキーが2週前、1週前と攻め馬をしてくれて、事細かく状態を教えてもらいました。最後の差も、康太が後押ししてくれたのかな、と。康太も喜んでいるんじゃないかと思います。康太、ありがとう、お疲れさまでした、と伝えたいです」
友道康夫調教師は、共同会見の場に立つと、司会者が話し出す前に、こう切り出した。
「最初にひと言。先日の落馬事故で亡くなった藤岡康太君のご冥福をお祈りします。康太君は、うちの厩舎の調教を手伝ってくれて、この勝利は彼のおかげだと思います。本当にありがとうございました」
途中、言葉が途切れ、ハンカチで涙を拭うシーンもあった。
「今日は、馬の名前ではなく『康太、康太!』と叫んでいました。1週前追い切りに乗ってもらって、『1週前としては最高です』と言ったのが、彼との最後の会話になりました。彼は、去年の秋くらいからこの馬の能力の高さを感じてくれていて、ここまで育ててくれました」
新馬戦ではトム・マーカンド、2戦目となった前走の共同通信杯は戸崎が騎乗したのだが、藤岡康太騎手は、自身もトップジョッキーのひとりでありながら、自ら裏方の役割を買って出ていたのだ。マカヒキ、ワグネリアン、ドウデュースといった友道厩舎のダービー馬すべての調教に騎乗していた。
前日の中山グランドジャンプでも「康太、勝ったぞ!」
皐月賞の前日の土曜日、阪神競馬場で兄の藤岡佑介がメディアの取材に応じた。まず、弟に関して心配してくれたことの礼を述べ、家族で無事に見送ったことを報告してから、次のように話した。