「本音は、蒼生たちとワイワイしたいですよ。でも、在学中はしないと思います。大学1年の時は実家から通っていたので、同期のみんなでご飯に行くという機会はそこまで多くなかった。もしかしたら、それが大学卒業した時の唯一の悔いになると思います。やっぱり僕も普通の大学生なので、そうした感情は今もありますし、卒業してからもずっとそれは心残りだと思います。でも、こういうことも覚悟の上でこの道を選んだわけですから、突き進むだけです」

　入り混じる本音と感情。そこにはお互いに対する深い絆が存在する。

田村から“ヘッドコーチ”にお願い

「伊吹のやりたいサッカーは僕が一番理解していると思うので、それをピッチで僕が一番表現したい気持ちが強い。伊吹はあまり弱さを見せるタイプじゃないけど、僕はいつでも話を聞くし、むしろ言ってほしい。コーチになった伊吹はきっと孤独だろうなと。伊吹は割り切ってやっていますが、僕はまだ割り切れないのが本音。親友だし、仲間だし、ライバルだし。だからこそ、僕は彼を一人にさせたくないし、支えたいとも思います」

　田村には1つだけ、戸田へのお願いがある。

©︎Takahito Ando

「試合に勝った時も点を獲った時も伊吹には、選手と同じようにガッと喜びの輪の中に加わって欲しいです。高校時代は点を獲ったり、勝ったりしたら、ワーッと飛びついてくるタイプだったので、余計に。その時くらいは、解放してほしいですね（笑）」

　それぞれが目標に向かって突き進むからこそ、生じる葛藤。淀みのない2人の純粋な思いや、時折浮かべる苦悩の表情を見ると、羨ましくなる。人生において、唯一無二のライバルがいることはとても幸せなこと。この経験は彼らの将来において大きな財産になるだろう。

　今はまだ無名の大学生が織りなす熱い物語。次のステージに進むとき、2人はどんな大人になっているだろうか。

＜前編から続く＞