- #1
- #2
“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
「僕はまだ割り切れてない」プロ入りを懸けた勝負の1年…元U-18日本代表・筑波大エリート大学生はなぜ“ヘッドコーチ”との関係性に悩んでる?
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2024/04/05 17:03
今季から筑波大のヘッドコーチに就任した戸田伊吹とチームの中核を担う田村蒼生(ともに4年)
互いに3年生になり、戸田はセカンドチームからトップチームのアシスタントコーチに昇格。1年生からずっとトップチームでプレーしていた田村と再び練習や試合で一緒の時間を過ごすことが多くなった。田村は、戸田が指導者として成長していることを実感すると同時に、ジャージ姿で笛を鳴らす姿に立場の違いを痛感する。
「個人的な感情を除けば、伊吹はコーチとして非常に能力が高い。伝え方もしっかりとしているし、自分を持っているし、選手の声に耳を傾けることができる。自分がこれまで指導を受けてきたコーチと遜色ないと思います」
同じ時間を過ごしたことで、徐々に戸田への理解は深まった。しかし、大学生活最後の1年が2人の関係性をより複雑にする。
プロ入りが懸かる勝負の1年
2024年春、戸田は平山相太(現・仙台大監督)の後を引き継ぎ、ヘッドコーチに就任。日々の練習メニューの構築から、試合のメンバー選考、采配まですべてを託されることになった。それは、田村の夢にも大きく関わってくる。
現時点で、田村はまだプロ入りが決まっていない。今季は全ての試合がアピールの場となる背水のシーズンとも言っていい。万が一、試合に出られなくなったら、その夢はどんどん遠のいていく。つまり、田村の命運を握るのは、親友である同い年の戸田なのだ。
「蒼生には躍動してほしい、その思いに尽きます。ピッチの上で価値を証明して、僕の手が届かないところまで羽ばたいていってほしい」
田村もそんな思いに応えたいと語気を強める。
「伊吹の一番の理解者であり続けたい。でも、僕も4年生のシーズンなので、なんとしても試合に出たいし、結果を出して、プロ入りを決めたい。自分自身の人生もかかった1年なので、一緒に切磋琢磨しなければいけないし、葛藤は捨てないといけないと思っています」
関東大学サッカーリーグ開幕を控えた3月中旬、「IBARAKIサッカーフェスティバル」の順天堂大戦で戸田ヘッドコーチは初陣を飾った。田村はトップ下でスタメン起用され、見事にその期待に応えた。試合後、思いが溢れた。
「正直、今まで抱いたことがないような感情がありました。言葉に表すのは本当に難しいのですが、選手として期待に応えたい気持ちと、やっぱり大学最後の1年間は一緒にプレーしたかったという親友としての気持ちが同時にこみ上げてきました」
田村の様子を間接的に伝えると、戸田ヘッドコーチも胸の内を明かした。