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「出ていったこともあった」夫・魁皇と“2回の離婚危機”…女子プロレスラーから相撲部屋の女将になった西脇充子が明かす“夫婦の関係性”
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byJIJI PRESS/Takuya Sugiyama
posted2024/04/07 17:02
元大関・魁皇の浅香山博之と結婚し、相撲部屋の女将となった元女子プロレスラーの西脇充子
50歳、PET検査で見つかった乳がん
――意外と最近ですね。
西脇 そう、6年前ぐらい。50になるきっかけで、友達と一緒にPET検査を受けたんですよ。そしたら、私だけ次の日の朝に電話がかかってきて、「すぐに来てください。腫瘍が見つかりました」って。部屋をほっぽり出して病院に聞きに行って、8時間ぐらい説明を聞いてたもんだから、(部屋に)残った親方にとっては地獄の8時間だったみたいで。「そのときにいろいろ考えた」って言ってました。妻がいなくなったらどうしよう、とか。そこから変わりましたね。自分でやれる範囲のことは、やってくれるようになりました。
――乳がんは、結果的には?
西脇 ステージ1で、ほんとに初期。腫瘍も7ミリぐらいで、1カ月後ぐらいに手術をした。そのときは大阪場所中だったんですけど、1日で帰ってきて、手術に立ち会ってくれて、また戻って。リンパへの転移はなかったけど、1カ月の放射線治療はやりました。その治療は近くの病院に変えて、親方が送り迎えをしてくれて。
――現在は、もう根治で?
西脇 もう5年たったから薬もやめてるけど、ついこないだ5年ぶりにPET検査をやったんですよ。私も親方もあの日のトラウマがあるから、翌日にかかってくる電話が怖いわけ。でも、今回はなかったので、ほっとしてる今日この頃。
「女将は大変でしょう」なんてみんなは言ってくれるけど…
――夫婦関係やフィジカル面は良好のようですが、女将業はいかがでしょう。
西脇 正直いうと、現役時代の親方1人を支えていたころのほうが大変だった。「女将は大変でしょう」なんてみんなは言ってくれるけど、今はとっても楽です。“子どもたち”は料理、掃除、洗濯、自分のことは自分でやる。私は親がわりだけど、本物の親じゃないから、言うことを聞くんですよ。自分の親にだったら「うっせー!」とかなるだろうけど、それがないから、ぜんぜん大変じゃない。
――一般的に描かれている女将業とは、まったく違いますね。
西脇 そう。女将さんって、ちゃんこ場に立ってるイメージがあるでしょ? ないです(笑)。ほかの部屋はわかんないけど、私はない。ちょこっと行くと、「女将さん。邪魔です」って言われるし、「女将さん、何か食べたいものはないですか?」「これ作ったんで、食べてください」っていうのを、あの子たちも楽しんでる感じ。
――YouTubeの「浅香山部屋公式チャンネル」を見ていても、アットホームな雰囲気が伝わってきます。
西脇 かわいいの。ミニオンズ(人気アニメ映画「怪盗グルー」シリーズに多数登場する生物)みたいで(笑)。ほとんどの子がメガネをかけてるから、ほんとにミニオンズなの。女将になったときに親方から言われたのは、「感情移入をしすぎるな」ということで、「弟子たちはここを辞めてしまえば関係性がなくなるし、おまえは女将さんであっても、ほんとの親ではない。あいつらは、いずれ親御さんのところに帰る。感情移入すると、つらくなるだけだ」と。今でも言われるけど、無理! だって、一緒に生活してんだもん。これ、母性だね。自分にこんなに母性があるなんて、女将さんになって初めて知ったよ。
《女子プロレスラーとしての現役時代、魁皇関からのプロポーズなどを語ったインタビュー1回目、2回目も公開中です》