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「出ていったこともあった」夫・魁皇と“2回の離婚危機”…女子プロレスラーから相撲部屋の女将になった西脇充子が明かす“夫婦の関係性”
text by
伊藤雅奈子Kanako Ito
photograph byJIJI PRESS/Takuya Sugiyama
posted2024/04/07 17:02
元大関・魁皇の浅香山博之と結婚し、相撲部屋の女将となった元女子プロレスラーの西脇充子
西脇 後援者の方のお誘いなら行けるわけ。結婚のお祝いで招待してもらって、行きました。ミッキーマウスを呼んでくれてたんです。私は知ってたけど、親方には内緒で。私が「ミッキーって園内に1匹しかいないんだよ」なんて言っても、親方は「何がミッキーだよ。ねずみだろ?」とか言っちゃって。ごはんを食べたあとにミッキーが来てくれたら、親方、「うわー、ミッキー!」なんて大興奮(笑)。嘘でしょ、「ねずみだろ」って言ってたじゃん、みたいな。その激写がね、これ(と、スマホを見せてくれる)。親方も若いなぁ(しみじみ)。
魁皇関との“2回の離婚危機”
――ここまではすべて、現役中のお話ですよね。引退は2011年7月でした。
西脇 最後の「引退相撲」は、協会や部屋ではなくて、自分たちで興行を打つんです。それが大変で! 夫婦だとだいたい奥さんが仕切って、これは“引退相撲あるある”なんですけど、必ず離婚問題に発展する出来事が起こる。うちもありました。2回も。
――2回も離婚危機に!?
西脇 「もうやってられない!」「もう無理!」とか言って、私が出ていったこともあったし、親方が出ていったこともあった。聞くと、どこの家庭もそうだって。それぐらい大変なの。準備期間は約1年。うちは7月の名古屋場所で辞めて、翌年の5月が引退相撲で、両国国技館は1万人のお客さんが入るんですけど、そのチケットを自分たちで売らなきゃいけない。まず、「魁皇引退事務局」っていうのを立ち上げて、マンションを借りて、従業員を雇って、電話回線を引いた。Kinko'sに行って、客席の図面をでっかく拡大して、とにかくチケットを売る。チケットぴあとかに頼まずに、全部自分たちで。1万人の大「魁皇」コールを聞きたい、ただそれだけの思いで。
――聞いたときは、どんな思いになりましたか。
西脇 鳥肌が立ちました。1万人が「魁皇! 魁皇!」ってね、涙が出ました。おかげさまで満員御礼で、あの感動ったらありゃしない。興行を終えるとね、だいたい奥さんの持ち物が増えてるんです。私は高級腕時計を買ってもらいました。それを見るたびに、がんばれた自分と、親方へお疲れさんの気持ちになれるから、一生の宝物ですよね。
「ほんとの夫婦っぽくなったのは、辞めてから」
――この話が“鳥肌もん”ですね。さて、引退後から現在はいかがでしょう。
西脇 親方が運転して、ごみも出して、買い物に行ってって、すごい変わりよう(笑)。コストコに行っても、うしろでショッピングカートを引いてるし。それができるようになったのは、引退して親方になってからで、やっとだよね。ほんとの夫婦っぽくなったのは、辞めてから。あと、ランチね。親方は、「俺、ランチって初めてした」って言ってました。
――現役時代は、外食でランチすることもなかったんですか。
西脇 2人でランチはなかったね。辞めてからようやく、いろんなとこで食事ができるようになった。犬がいるから、犬も入れるお店をスマホで探して、行ってますよ。
――一般的な夫婦になれたことで、関係性まで変わりましたか。
西脇 女将さんの代わりはいくらでもいるけど、親方の代わりはいないから、絶対的な存在。ちゃんと立ててあげないとって思うけど、親方も変わった。私がいないと困るという感覚を持ったと思います。なぜそう思うかっていったら、私が乳がんになったから。50歳のときですね。