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「常に勝ち続ける難しさを…」世界選手権3連覇、坂本花織(23歳)が自分に掛け続けたプレッシャー…取材記者が見てきた「地道な姿勢」
posted2024/03/28 11:03
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Getty Images
その光景は象徴的だった。
フィニッシュを迎える前に、観客席には立ち上がる人々の姿がうかがえる。
最後のスピンを終える。歓声と万雷の拍手がおくられる中、氷上に両手と両ひざを突いた。表情にはおさえきれない感情があふれた。
2024年3月22日、フィギュアスケ―トの世界選手権女子フリー。坂本花織は圧巻の演技で3連覇を果たした。
表情、仕草にも宿った坂本の表現力
今シーズン、グランプリシリーズ2戦とグランプリファイナル、全日本選手権と主だった大会ではショートプログラム、フリーともに1位の完全優勝を果たしてきた。ただ世界選手権はこれまでと異なる展開で進んだ。ショートプログラムではトリプルルッツの着氷が乱れ、4位スタートとなったからだ。
追う立場となってフリーに臨むにあたって、「焦りや緊張はありました」。
フリーは『Wild is the Wing/Feeling Good』。いざスタートすると、冒頭のダブルアクセルをいつものように雄大に決め、ジャンプを次々に決めていく。2つ目のジャンプ、トリプルルッツこそeマーク(正しいエッジで踏み切っていないこと)がついたが、それを除けば見事に成功させていった。
ジャンプばかりではなくスピンやステップ、隙のない演技を続ける。その表情、細やかな仕草に至るまで曲の世界を表現していく。歓声と万雷の拍手が起こるのも自然なことだった。
坂本の得点は149.67点、スケートカナダで出した今シーズンの世界最高得点151.00点に迫る高得点をマークし総合では222.96点。続く3人の選手が坂本を上回ることはなかった。