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「常に勝ち続ける難しさを…」世界選手権3連覇、坂本花織(23歳)が自分に掛け続けたプレッシャー…取材記者が見てきた「地道な姿勢」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2024/03/28 11:03

「常に勝ち続ける難しさを…」世界選手権3連覇、坂本花織(23歳)が自分に掛け続けたプレッシャー…取材記者が見てきた「地道な姿勢」<Number Web> photograph by Getty Images

世界選手権で3連覇を達成した坂本花織

自分にかけ続けたプレッシャー

 逆転で成し遂げた優勝は、実に56年ぶりの世界選手権3連覇という偉業をしるす優勝でもあった。

「いい緊張感の中でひとつひとつ、集中してできました」

 と、振り返る。

 でもそれは容易なことではない。3連覇への期待は、昨シーズンの世界選手権で優勝した時点で寄せられていた。シーズン中も取材時に触れられることがあったし、世界選手権が近づけばなおさら、高まっていった。

 周囲の視線もさることながら、坂本自身も意識して取り組んできた。昨年末にはこう語っている。

「世界選手権3連覇は今シーズンずっとやってきた目標で、どうしても達成したいです」

 周囲の期待、自身が課した目標は内と外からかかるプレッシャーでもある。しかも今シーズンの主要大会では初めて追う立場となる中、プレッシャーをはねのけたことに真骨頂がある。

「常に勝ち続ける難しさを感じた優勝」

 今シーズンに限った話ではない。

 3連覇を振り返りながらこう語る。

「初めて優勝できたときはオリンピックシーズンで、世界選手権の1カ月前にオリンピックがあってかなり燃え尽きて。1カ月後に世界選手権でしんどい部分がたくさんあったんですけど、いろいろその間に状況が変わって、勝たないといけない、自分が勝たないと、という気持ちに、ナーバスになっていって。でも最後の最後までやりきった気持ちがあったので、初めて優勝できたときがいちばんうれしかったです。

 2回目は、オリンピックシーズンが終わった後でそれこそまた燃え尽きて。グランプリファイナルまでは本調子じゃなくて、でも世界選手権で連覇したい気持ちもありました。その葛藤を乗り越えての優勝でした。自分がいちばんやりたくなかったミスをしての優勝だったので悔しさの残る優勝だったなと思います。

 今日は、今シーズンずっと調子がよかったので、ショート4位になったときに好調を維持し続ける難しさを感じて、必ずしもショート1位、フリー1位の総合1位になれるわけじゃないなと経験できました。常に勝ち続ける難しさを感じた優勝だったなと思います」

 3シーズンにわたって、強い精神力を示してきた。

【次ページ】 北京五輪後も燃え尽きることなく……

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