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スポーツ百珍BACK NUMBER
『不適切にもほどがある!』で注目の1986年…スポーツ界の“無双”は?「三冠バース・落合博満、ムキムキ千代の富士、マラドーナは“不適切”」
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byTBS
posted2024/03/23 20:00
『不適切にもほどがある!』の主人公・市郎。彼らが生きる1986年のスポーツ界とはどんなものだったか
◇ ◇ ◇
バース:もしセ・リーグでプレーしてみないかといわれたら、どのチームに入る? やっぱりトーキョー・ジャイアンツかい?
落合:どこでもいいよ、野球ができれば。
バース:特に希望はない?
落合:ご希望なし。自分を高く買ってくれるとこだったら、どこでもいい。
◇ ◇ ◇
現代で〈金額面で最も評価してくれるところに籍を置く〉という働き方マインドは、プロ野球のみならずビジネスパーソンにも一般的になった。かつては〈高い年俸を要求する=金の亡者〉と見る向きもあったそうだが……2人は当時からプロフェッショナルとして評価される指標としての値付け、という意識を持っていたと感じる一節である。なお落合は87年、大型トレードでのドラゴンズ入団を経て、94年にFA移籍でジャイアンツの一員となる。
なお『不適切にもほどがある!』では純子が父のために『プロ野球ニュース』をビデオ録画したと親思いの一面を見せる場面があった。この2人の打撃を目にして、市郎はどんな気持ちになっただろうと思いを馳せたくなる。
ムキムキな千代の富士も圧倒的な強さだった
1986年に無双していたアスリートは野球にとどまらない。
相撲界に目を向ければ、昭和の大横綱・千代の富士が圧倒的な強さを誇っていた。
<昭和61年(1986年)大相撲:千代の富士の成績>
初場所:13勝2敗(優勝)
春場所:1勝2敗12休
夏場所:13勝2敗(優勝)
名古屋場所:14勝1敗(優勝:大関・北尾との決定戦)
秋場所:14勝1敗(優勝)
九州場所:13勝2敗(優勝)
なんと全6場所中、ケガで途中休場した春場所以外の5場所で幕内最高優勝を成し遂げている。翌87年の初場所も12勝3敗(決定戦で双羽黒に勝利)で5場所連続優勝、さらには前年の85年には年間80勝を達成しているなど、鍛え上げたムキムキな肉体美で「ウルフ」の異名を取った千代の富士は、黄金時代の真っただ中にいたと言える。
天才マラドーナは「神の手→5人抜き」のち不適切言動
日本から世界に目を向けると、この年に最も「無双」していたアスリートは、アルゼンチンが生んだ天才ディエゴ・マラドーナだろう。
マラドーナが世界の頂点へと駆け抜けたのは、1986年のメキシコW杯。ジーコ、プラティニといった名選手ぞろいでW杯に残る名勝負が数多く誕生した同大会において、マラドーナは特別だった。
語り草になっているのは準々決勝イングランド戦である。