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浦和レッズ初勝利も決勝点の酒井宏樹が「納得いってない」、興梠慎三は「いやいや、それじゃあ…」ヘグモ戦術浸透まで“泥臭く勝つ”大切さ
posted2024/03/11 11:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
J.LEAGUE
先制ゴールをあげたキャプテンの酒井宏樹がまったく笑顔を見せずに吠えながらガッツポーズを繰り返せば、スマートにプレーするタイプのサミュエル・グスタフソンが渾身のタックルでユニフォームを汚し、ゲームを終わらせた――。
その様子から、まだ開幕3試合目ながら、浦和レッズがこの試合に背水の陣の心境で臨んでいたことが窺えた。
「この第3節はターニングポイントになると思っていたので良かった。今日はみんなが本当によく闘っていた。こういう試合ができるんだ、ということを見せられたと思う」
J1リーグ通算出場試合数を591に伸ばし、歴代4位となったGK西川周作は安堵の表情を覗かせた。
初勝利を呼び込んだ初先発・前田と興梠の働き
開幕から2戦未勝利、1分1敗同士の対戦は、アウェイチームがセットプレーから奪ったゴールを守り切り、北海道コンサドーレ札幌を下して12位に浮上した。
優勝候補と目されながらスタートダッシュに失敗した浦和に初勝利を呼び込んだのは、今季初先発となった右ウイングの前田直輝と同じくセンターフォワード興梠慎三だった。
古巣の東京ヴェルディとの対戦だった前節を体調不良のために欠場した前田は、そのうっぷんを晴らすかのようにガンガン仕掛け、2分、3分、14分と立て続けに際どいシュートを放ち、チームに勢いをもたらした。
「結局0ゴール・0アシストなので。『前田、良いところまで行ってるんだけどな』で終わる選手にはなりたくない」と悔しさを滲ませたが、ウイングで優位性を作るというペア・マティアス・ヘグモ新監督のスタイルを紛れもなく体現していた。
決勝点のCKで見せた、前田の気転とは
待望の先制点にして決勝ゴールも、前田の気転によるものだった。
前半30分、センターバックのアレクサンダー・ショルツからのロングボールを前田が競り合って獲得したコーナーキックの場面。本来はサミュエル・グスタフソンが蹴るところだが、前田がショートコーナーを敢行して素早くグスタフソンにボールを預ける。
あまりにクイックリスタートだったから、ショルツも、マリウス・ホイブラーテンも、酒井もゴール前に入っていくのが遅れてしまう。
しかし、それが奏功した。