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浦和レッズ初勝利も決勝点の酒井宏樹が「納得いってない」、興梠慎三は「いやいや、それじゃあ…」ヘグモ戦術浸透まで“泥臭く勝つ”大切さ
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2024/03/11 11:02
笑顔を見せず雄叫びを上げる酒井宏樹と祝福する仲間たち。2024シーズンの初勝利で浦和レッズは好転するか
マークする相手が近くにおらず、ボールウォッチャーとなった札幌の選手たちの間隙を縫うように、ペナルティエリアの外から飛び込んできた酒井がフリーで合わせ、完璧なヘディングシュートを叩き込んだのだ。
「僕が見ていないうちに始まっていたんですけど、あそこにスペースがすごく空いていたので」と酒井が振り返れば、前田も胸を張る。
「2対1を作れる場面があるのはリサーチ済みで、これは(自分とグスタフソンで)2対1が作れるぞ、もうフリーだぞ、ととっさに思って。中の準備が整うよりも、ここでアクションを加えれば何かが起こるんじゃないかって」
興梠は「チアゴさんに…」と謙遜するが
一方、チアゴ・サンタナに代わって先発した興梠は、左右に流れたり、中盤まで落ちてきたりして攻撃の基準点となった。「得点を取りたかったですけど、チームが勝つために前で(ボールを)収めることを一番に考えた」と振り返ったが、実際、興梠が生み出すスペースや1、2秒の時間が攻撃を好転させていた。
実は昨シーズンも、開幕2連敗で迎えた3節で興梠が先発復帰した途端、チームは4連勝を飾って勢いに乗った。その再現を期待する声に対して、「いやいや、それじゃあダメですよ(笑)。チアゴさんに早くコンディション上げてもらって、それまでの繋ぎとして頑張りたい」と笑いを誘ったが、37歳がスタメンを張っているようでは優勝なんてできない――そんな本音が見え隠れしていた。
いずれにしても、ここまで見せ場を作れずにストレスを溜め込むチアゴ・サンタナにとって、この日の興梠のプレーがヒントになればいいのだが。
前田と興梠が同時にピッチを去った52分以降、浦和の攻撃がトーンダウンしたことからも、ふたりの貢献度の高さは明らかだ。
“チームの綻び”を消す小泉、伊藤敦の頑張り
とはいえ、インサイドハーフの小泉佳穂と伊藤敦樹の働きぶりも見逃せない。
ウイングやセンターフォワードをサポートし、ゴール前まで飛び出し、中盤ではボールをシンプルに動かし、アンカーをヘルプし、ビルドアップにも関わって、サイドバックのカバーもする……。
前掛かりの4-3-3に取り組む浦和はまだまだ発展途上で、“戦術の隙間”や“布陣の穴”や“機能性の綻び”が少なくない。そうした弱みをインサイドハーフが頑張って消すことで、チームが機能している面がある。