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ロッテで“超格差トレード”→巨人戦力外→オリックス育成契約…《大阪桐蔭で全国制覇》香月一也が描く下剋上「森さんに良いところを見せたい」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byFumi Sawai
posted2024/03/03 11:03
今季から育成選手としてオリックスに入団した香月一也。大阪桐蔭時代は全国制覇も経験し、プロではロッテ→巨人→オリックスと3球団目となる
「ロッテもジャイアンツもみんな仲が良いですけれど、オリックスもすごく雰囲気がいいですね。指導者と選手の距離感も良くて。もちろん、締めるところはちゃんと締める。良い雰囲気の中でやらせてもらっています」
育成契約は1年、1年が勝負となる。
「自主トレを一緒にやってきたとは言っても、自分は森さんと立場が全然違います。自分は2月1日にいいスタートを切れるように自主トレで準備をしてきて、キャンプの後半も自主トレでやってきたことをそのまま継続してできていたので、その点は良かったです」
全体練習後、室内練習場では森や頓宮(裕真)と共にフリー打撃にも連日精を出していた。毎日遅くまでバットを振り続け、ティー打撃にも人一倍時間をかけ、感触を磨いていた。
「バッティングで結果を残すことは大前提で、捕手としてはピッチャーを助ける意味でも中途半端にはできません。両方でアピールして、支配下登録になれるように、この1年間はがむしゃらにやるだけです。とは言っても、がむしゃらになりすぎて力むのは良くないですが……」
巨人時代は「追い込みすぎて空回り」の苦い記憶
実は香月の脳裏には、過去のある“失敗”がこびりついていた。
「3クール目の最初の紅白戦で5番DHでスタメン出場したんですけれど、1打席目でヒットを打てたことは大きかったです。アウトになってもアウトの内容が良かったらいいとも思いますが、やっぱり結果は欲しいですから。1本のヒットで安心している訳ではないですが、気持ちが楽になりました。
ジャイアンツに移籍したばかりの時は、実戦でなかなか初ヒットが出なくて、結果を出さないといけないって追い込みすぎて空回りしてしまったことがあったんですよ」
ひとつの結果に一喜一憂しすぎず、着実に一歩ずつ目標に近づく。まずは支配下選手登録、そして香月が描く“夢のシチュエーション”もある。
「森さんにいいところを見せたいですし、自分を拾ってくれたオリックスに恩返しがしたいです。それに、試合で自分が打って森さんとハイタッチして抱き合いたいんですよ」
かすかに弾んだ声が、香月の“3度目の挑戦”への思いの強さを感じさせる。
ただ、その時浮かべた控えめな笑顔にはこの上ない覚悟がにじんでいた。