その森とはシーズンオフになると共にジムなどに出てトレーニングをする間柄だったが、本格的に合同自主トレを共にやりたいと懇願したのは、その数年後だった。

「自分はプロになった頃、特に1年目は自主トレって正直よく分かっていなかったんです。若い時って細かいことを考えなくても体が動くじゃないですか。プロ3年目くらいから福浦（和也）さんと自主トレをするようになって、自主トレの重要さを感じるようになったんですけれど、福浦さんが現役引退してから森さんと一緒にやりたいと思うようになって」

　当時、森は西武の先輩の山川穂高（ソフトバンク）とトレーニングを行っていたが、2人は香月の志願を快諾してくれた。それから年が明ければ沖縄で共にトレーニングをするのが恒例になったが、香月にはとても印象に残っていることがある。

昨季、オリックスで打率.294の成績を残した森友哉　©Hideki Sugiyama

プロで活躍の先輩は「会話がずっと野球なんです」

「山川さんと森さんの会話が、もう“プロ”っていう感じで。練習している時以外でも山川さんと森さんの会話はずっと野球なんですよ。ご飯の時も野球用語が飛び交っていて、それはもう衝撃的でした。それに森さんって寝る前も野球の動画を見ているんですよ。

　僕も寝る前に携帯（電話）はいじりますけれど、そこまで野球、野球っていう感じではないので。それぐらいやらないとあんなに打てないんだなって……。そういう姿勢は見習わないといけないと思いました」

　森の野球に対するストイックさに心を打たれながら、毎年変わらないといけないとは思い続けてきた。

　ただ、それが結果にすぐに反映する訳ではなく、試行錯誤の時期もあった。昨季、巨人を戦力外通告となった直後、森は香月の進路を誰よりも心配してくれたという。

キャンプでの香月　©︎Fumi Sawai

「だから、オリックスに決まった時に森さんはすごく喜んでくれました。自分も森さんと同じユニホームを着ることができるのはすごく嬉しいです。実は、ロッテにいた時に自分も西武に行きたいなって考えていたこともあるんですよ」

　大阪桐蔭在籍時以来、10年ぶりに戻ってきた関西で、尊敬する先輩と同じユニホームに袖を通した。関西らしい和気あいあいとした空気の中で、時には笑顔をふりまきながらグラウンドを駆ける香月は、もうすっかりオリックスというチームに溶け込んでいた。

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