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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「東京五輪でファンになりました」って俺、負けたのに? スケボー世界王者・白井空良のホンネ「全盛期は今、誰よりも本気で。でも…」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAsami Enomoto
posted2024/03/08 11:02
パリ五輪代表切符争いが佳境を迎える中、スケートボード世界王者の白井空良がインタビューに応じてくれた
「自分で体験して、体感して、これは本当にすごいものなんだなって思いました。カッコよさがついてくるかはわからないけど、そこで勝ったら自分が本当にやりたいことをやりやすい世界になるのかもしれないなと。だから、これは獲っておくべきだと思って今は本当に頑張ってます」
東京五輪、白井は盛り上がりの蚊帳の外にいた
日本人スケーターの活躍に沸いた3年前の東京オリンピック。4種目中3つの金メダル獲得という成績だけでなく、『ゴン攻め』『ビッタビタ』『真夏の大冒険』などのワード、勝ち負けに縛られすぎない選手たちの称え合い、高め合う姿も注目された。
だが、白井自身はそんな盛り上がりの蚊帳の外にいた。
当時19歳、世界ランキングは3位とメダルを期待される立場で臨んだものの予選では9位止まり。上位8人で争われる決勝には進めなかった。対照的に初代五輪金メダリストに輝いたのは同じ日本代表の堀米雄斗だった。
「実力がないまま結果だけがついてきちゃって、オリンピックもいける!と思っていたら案の定負けました。オリンピックはスケートパークの規模感がそれまでの大会とは違っていた。あんなデカいセクションは見たことなかったし、練習日からそれに対応できていない自分がいて、その時点でもう負けていたなと思ってます」
「すごくファンになりました」…って俺、負けたのに?
一番悔しかったのは、自分の滑りの不甲斐なさでもなく、堀米が金メダルを獲ったことでもなく、大会後の予想以上の反響の大きさだった。
メダリストになった途端に知人が増える“オリンピックあるある”。ところが予選落ちした白井まで同じように、ほとんど会ったことがないような人たちから次々と称賛、ねぎらい、激励が届いた。それこそが東京オリンピックでのスケートボードの求心力だったのだろうが、言われた白井は戸惑った。
「本当にいろんな人からメッセージが来て、俺は負けたのに? って思いました。『すごく楽しんでて、すごくファンになりました』って、別にそんなのを見せたかったわけじゃなかった。なんかそこで悔しさが出たんです。じゃあ次にその人たちが俺を見るのはいつなんだろうと考えると、世界選手権じゃなくて、SLS(スケートボードのプロリーグ)でもなくて、パリ。もうそこしかない。みんながオリンピックに向けて4年間かけてやる理由もそこでわかりました」
今回はその舞台の大きさを理解した上で、スケーターとしてくすぶる思いにもケリをつけたい。