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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「東京五輪でファンになりました」って俺、負けたのに? スケボー世界王者・白井空良のホンネ「全盛期は今、誰よりも本気で。でも…」
posted2024/03/08 11:02
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Asami Enomoto
やりたいこととやらなければいけないこと。そこにはいつもギャップがある。
いつでもゴーイングマイウェイに見えるスケーターでもそれは同じ。世界トップレベルのスケーター、白井空良であってもそうだ。
やっぱり人に迷惑かけてるのも分かってますから
そもそも白井にとって最初はスケートボードも「やらなければいけないこと」の方に入っていた。子どもの頃はどちらかといえばやらされている感が強く、海外のスケーターの映像などもあまり興味はなかったという。それよりも虎党の祖父と一緒にプロ野球の阪神戦を観る方がよっぽど楽しかった。
「糸井(嘉男)さんが好きでしたね。なんかスター性に溢れてたじゃないですか。それがカッコよかったし、あとは鳥谷(敬)さんも好きでした。去年もずっと阪神は観てましたよ」
昨年久しぶりの日本一に輝いたタイガースと同じように、白井も12月の世界選手権で久しぶりに優勝することができた。国内外のコンテストで表彰台には上がり続けていたが、そのど真ん中に立つのは実に4年ぶりだった。
いまではもちろん阪神戦を観る以上にスケートボードが楽しい。ただ、心の底からスケートボードが好きと言えるようになった今でも葛藤はある。
例えばプロスケーターにとって不可欠とされる、ストリートで撮影した映像作品を残すこと。
「ストリートでやりたいこともあるけど、あんまり好きじゃなくて。やっぱり人に迷惑かけてるのも分かってますから。でもストリートでいい映像を残せたときは大会で勝ったのと同じぐらい嬉しいですし、スケーターとしてやらなきゃいけないのも分かってる。これまではそっちをできるタイミングもなかったので、オリンピックが終わったら自由にやれるのかなと思ってます」
「別にオリンピックが好きではない」けれど
目下のところ、そのオリンピックがやらなければいけないことの筆頭にある。誰に強要されたわけでもなく、白井は自らそう定め、東京オリンピック出場後はストリートでの撮影もせずにオリンピックファーストで突き進んできたのだ。
「別にオリンピックが好きではないですし、カッコいいとも思わないです」
そう態度をはっきりとさせた上で、「でも」と白井は続けた。