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伊藤美誠の辞退で揺れる女子卓球“リザーブ”には誰が選ばれる? 予想される“2人の名前”「日本人5位の新世代」「平野美宇から勝利の21歳」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/02/29 17:11
女子卓球パリ五輪のリザーブ候補として予想される木原美悠(左)と長崎美柚
平野美宇、早田ひなも経験した“ボール拾い”
実際、リオデジャネイロ五輪や東京五輪のリザーブは次へとつながる意味が大きかったように思われる。リオのリザーブである平野は、練習相手としての役割を果たしつつ、それこそ練習中のボール拾いを務め、試合では声援をおくり続けた。勝利を願いつつ、一方で悔しい時間でもあった。それをばねにして攻撃的なスタイルを志向し、成長を遂げた。
東京五輪のリザーブ早田もまた、事前合宿から帯同し、練習相手を務め、ボール拾いも担い、試合では観客のいない席から応援した。
「伊藤選手は3種目全て金メダルを目指していて、シングルス、団体では獲れなくてほんとうに悔しそうな表情を間近で見て、オリンピックの厳しさを感じました」
「平野選手も試合前は緊張したと思うけど、試合に入ったらいつも通り思い切ってできていました。選手自身が自分のことを分かっているんだと思いました」
大舞台を肌身に感じたことが今日へとつながっている。
平野、早田ともに代表争いを繰り広げながらオリンピック代表になれなかった立場でもあった。だから「次こそ」となれただろう。パリへの伊藤の立ち位置とは異なる。伊藤が「リザーブは今後将来を背負う選手が」と言うのも、平野や早田を見てきたこともあるはずだ。
ではリザーブには誰が? 最有力は「19歳の新世代」
そのリザーブの選考基準は「日本がメダルを獲得するために必要なダブルスおよびシングルスでの国際競争力を持ち合わせている者1名を強化本部が決定する」とある。平野、早田からもうかがえるように、代表3名に次ぐ実力者が選ばれてきた。そして平野、早田ともにこれからを背負う立場でもあった。
そういう観点からすれば、リザーブの候補としては、まずはパリ五輪選考ポイント、世界ランキングのいずれも日本勢5番目、19歳の木原美悠が浮かぶ。
パリ五輪代表の候補の1人と目されながら悔しい思いを味わってきた。例えば五輪選考対象大会の1つ、昨年7月の全農カップ・東京大会では1回戦で敗退、試合後にこう語っている。
「気持ちの部分でリードしていても自信がなくて、後半になるにつれて自信がなくなっていった自分がいました」
「1回でもいいから勝ちたかったです」
今回の世界選手権団体戦代表でもある。その舞台も、そして選ばれればパリの舞台も今後の財産になるだろう。