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彼女が「うちの実家、寺なんだ」…中島翔哉との海遊びで「自分はプロ失格」と絶望→23歳引退のJリーガーはなぜ“お坊さん”になったか
text by
間淳Jun Aida
photograph byJ.LEAGUE/Takuya Sugiyama
posted2024/02/25 06:01
カターレ富山時代の五藤(旧姓:梅村)晴貴さん。かつて同僚だった中島翔哉に大きな衝撃を受けたという
朝5時過ぎに起きて、犬の散歩からスタートする。その後は、朝課と呼ばれるお経をあげる日課や寺の掃除に勤しむ。葬式、通夜、法事に加えて、40歳以下の僧侶が集まる「寺子屋」にも参加する。寺子屋では寺を身近に感じてもらう活動の一環で、幼稚園や公民館などで子どもやお年寄りに人形劇や狂言を披露している。就寝は午後9時頃。サッカーのナイトゲームであれば、試合が終わった直後の時間に眠りに就いている。
ただ、五藤さんの実家は寺ではない。寺とのかかわりは身内の葬式や通夜くらいで特別な縁はなかった。現在は自身も参加している寺子屋の活動も、僧侶になるまで知らなかった。
「現役時代、セカンドキャリアの選択肢に僧侶はなかったです。僧侶と話したこともなかったですから」
交際していた彼女から「実家、お寺なんだ」
五藤さんが初めて僧侶と話したのは、プロ3年目の21歳の頃だった。後に妻となる夏美さんと交際してから1年半ほどが経ち、夏美さんの両親に挨拶に行くことにした。その時、想像もしていなかった言葉を告げられた。
「うちの実家、お寺なんだ」
夏美さんは三姉妹の末っ子。実家がお寺だったことにはびっくりしたものの、五藤さんはどちらかの姉の夫が寺を継ぐと思っていた。初対面の場でも後継の話は出なかった。
状況が少し変化したのは、林入寺を3度目に訪れた時だった。
<つづきは第3回>