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「墓場まで持っていく」平成プロレス最大の謎・ターザン後藤のFMW電撃退団はなぜ起きたか?「予兆は全く…」付き人らの証言で浮かんだ真実
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byAFLO
posted2024/02/16 11:03
平成プロレス最大の謎のひとつとも言われる「ターザン後藤のFMW退団」を証言を基に紐解く
麻原彰晃のキャラクターを強要? 噂の真相
松永と黒田の話を総合すると、大仁田が自身の引退後のFMWの体制のために後藤排除を考えていたこと。また、後藤が退団直前にその動きをなんらかの形で知ったことが浮かび上がってくる。
そして筆者は生前の後藤本人にもこの件について、直接インタビューで聞いたことがある。後藤はその際も「墓場まで持っていくんで言いませんよ」と口をつぐんだが、電撃退団に関係するひとつの“噂”については答えてくれた。それは大仁田が後藤に対して、当時世間を騒がせ社会問題となっていたオウム真理教の教祖・麻原彰晃のキャラクターになることを強要し、それに反発してFMWを退団したというものだ。
後藤はその噂をきっぱりと否定した上で、その噂の“元”となるエピソードを語ってくれた。
「あれはFMWで地方で試合をやった時、地元の“こっち系”の興行関係者の接待で、俺と若手大人数で焼肉屋に連れて行かれたんですよ。それで焼肉食った後に近くのスナックまで歩いて移動する間に、俺の姿を目撃した人たちから、何件も警察に通報があったらしい。『麻原彰晃がスナックに入っていった』ってね(笑)。
それでスナックで飲んでたら、親分とかもいるところに、なんか機動隊みたいなのがズカズカっと入ってきてね。そしたら、その組の若頭が自分たちが踏み込まれたと思って、スッと立って出て行ったんですよ。『嫌だなあ。変なのに巻き込まれたなあ』と思ってたんだけど、しばらくしたら、その警察の一番偉い人と若頭が笑いながらやってきて、その警察官が俺の顔を見て、『これはよう似とるわ』って(笑)。
俺は事態がよく飲み込めなくて、『どうしたんですか?』って聞いたら、『いや、麻原彰晃が来てると通報があったんです』って言われてね。お店の女の子はみんな大笑いしてるし、えらい恥かいたよ(笑)」
ターザン後藤のFMW退団の真相はいまだに藪の中だ。しかし、大仁田に麻原彰晃キャラクターを強要されたため辞めたわけではないことと、ターザン後藤が間違えられるほど麻原彰晃に似ていたことだけはたしかなのだ。