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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「いまはあまり競技はしたくないというか」…《箱根駅伝で優勝候補》駒澤大の“27分台ランナー”唐澤拓海が「消えた天才」の道を選ぶワケ
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byYuki Suenaga
posted2024/02/17 11:06
3月で駒大を卒業する唐澤拓海。1万m27分台の記録を持ちながら、最後の箱根路を走ることは叶わず。卒業後の進路についても聞いた
駒澤大は11月19日開催の上尾シティハーフマラソンをメンバー選考の大きな過程としていたため、唐澤はそこに向けて調整を図った。
だが、箱根本番に向けてまさに試金石となったこのレースで、終盤に足が止まり173位と思うような結果を残すことができなかった。レース直後は「(箱根まで)残り1カ月しかないので、やれることをしっかりやりたい」と話していたが、内心では諦めに近い感情があったようだ。
「夏に距離を踏めていない時点で無理だなって。仮に上尾一本だけ走れても、信頼度がないですし、練習していないので無理だろうと。じつは上尾の当日はカステラもちゃんと食べられたんですけどね。レースの途中でお腹が痛くなっちゃって。やっぱり付け焼き刃では全然ダメでした」
それでも、チームメイトは唐澤の復活を信じて待っていた。
全日本大学駅伝で優勝した直後、キャプテンの鈴木芽吹は「唐澤も今は良い練習ができているので、箱根には絶対に間に合うと思います」と熱く語っていた。
藤田監督も「いわゆる天才ですね」と期待したが…
11月下旬に藤田敦史監督に話を伺った際には、こんな言葉でメンバー入りすることに期待を寄せていた。
「力はありますからね。あとは(練習を)やっていない分をどこまで取り戻せるか。彼の場合は上がってくる速度が異常なくらい速いんですよ。いわゆる天才ですね。ですから、上尾で苦しんだとはいえ、ああいう選手は一回レースで感覚を掴んだらあっというまに上がってくる。そこはちょっと今後を見ながらかなと」
改めて当時の心境を訊ねると、唐澤は力なくこう答えた。
「確かに、監督からは『お前の場合は練習していけば調子が上がるから』って言われました。そう言われて嬉しかったですし、普通は諦めないんですけどね。でも、体調も戻し切れていないし、『無理だろう』って。また自分の悪いところが出ちゃいましたね。あの時も2カ月遅れくらいで悔しさがやってきました。『あぁ、もっと足掻いておけばよかったな』って」