結局は”場所前横綱”なんだよなぁ。三日目から休場して、六日目から再出場するも、八日目からまた休場しちゃったんだ。出たり入ったりって、質屋の商売じゃないんだからさ、師匠もちゃんと言い聞かせないと。いや、「1日でもいいから土俵に上がりたい！」って気持ちはわかるんだ。でもね、体の管理能力がなさすぎる。何か原因があるはずで、腰の持病などがあるとは聞くけど、やっぱり根本的な原因をちゃんと治しておかないと。これからも繰り返すだけだよ。

　連合稽古や稽古総見で自分の調子を計り、ガンガンとアピールするのはいいけど、稽古で力を出し切っちゃってどうすんだよ～。稽古でも手を抜かずに頑張る真面目さはいい。でも、本番にピークを持っていかなきゃね。本場所の15日間にフォーカスして、体の管理を考えて行こうな。もったいないぞ？

「宇良はエライ！」

　新三役として土俵に上がった宇良。6勝9敗の成績だったけれど「伝え反り」の大技を見せてくれたり、いつも100％の力を出しているよね。すぐ土俵を割っちゃうお相撲サンもいるなか、土俵をいっぱいいっぱいに使って、最後まで諦めない。毎日、自分の力を出し切っていて、「よし！　やるぞ！」との気合が伝わってくる。足技などの派手な相撲はないけれど、「今日の宇良は何をやってくれるのかな？」と僕も期待してるんだ。宇良はエライ！　みんな見習ってほしいよ。

初場所千秋楽、宇良（左）は竜電を「伝え反り」で下した　©JIJI PRESS

　振り返ると、今場所は「横綱の存在価値」を見直した場所だった。照ノ富士のここ一番の集中力がすごかったよね。若い子たちも、もっともっと頑張らないとな。

　最後になりますが、能登半島地震で被災された方々にお見舞い申し上げます。東日本大震災のときに、元大関のKONISHIKIさんと炊き出しに廻ったことがあるんだ。みなさん、ちゃんこ鍋を食べて「温かいものが食べられてうれしい」って言ってくれたんだよな……。相撲協会としても、時期を見て、これからできることをみんなで考えて行くみたい。今はまだ、まずはお相撲サンたちがいい相撲を見せ、ちょっとでも喜んでもらえるなら――それが一番なんだよな。

（構成＝佐藤祥子）