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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「南野拓実の左サイド」はなぜ機能しなかった? 中村憲剛が語り尽くすアジアカップの論点「キーマンは冨安健洋」「攻撃で重要なのは“幅”」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2024/01/30 11:02
中村憲剛氏が「キーマン」に指名した冨安健洋。大会初先発となったインドネシア戦では攻守にわたって絶対的な存在感を示した
森保監督は経験豊富ですから、そのあたりの選手心理はもちろん承知しているでしょう。ベトナム戦後は出場機会のなかった細谷も、このままでは終われないとしっかり準備をしているはずです。サイズのあるFWは上田と細谷の2人ですし、負けたら終わりのノックアウトステージで、森保監督が彼をどう起用するのかにも注目したいと思います。
“中村憲剛が選ぶキーマン”冨安健洋の統率力
グループステージで多くの選手が起用されたように、このチームは全員がキーマンと言って差し支えありません。そのなかであえて名前をあげるなら、冨安健洋になるでしょうか。
先発したインドネシア戦では、こまめなラインコントロールで最終ラインを統率していました。そうやって全体をコンパクトにしてくれれば、前線の選手はプレスにいきやすくなります。相手に蹴られてもロングボールを回収してくれれば、迷いなくプレスを仕掛けられるようになるからです。
インドネシア戦については攻撃から守備の切り替え、いわゆるネガティブトランジションがチームとして抜群に速かったです。インドネシア戦を前に開かれた選手たちのミーティングでも、過去2試合を踏まえてその点について話があったとの報道がありました。
サッカーの本質をさぼらずにやろうという意識が徹底され、3戦目にしてようやくいつもの日本らしさが見られたことには、冨安のラインコントロールも関係していたと思います。
インドネシア戦では、攻撃でも目を引くプレーがありました。2点目までの流れを巻き戻すと、冨安がDFラインからセンターサークル手前の堂安へ、ワンタッチでパスを出しています。
守備から攻撃への切り替わりで、DFがクリアではなくパスをつなげてくれると、かなりの確率でチャンスになります。相手は攻撃に意識が傾いていて、すぐには切り替えられないからです。
この場面でもパスを受けた堂安が自陣からドリブルで持ち出し、中村敬斗とのパス交換で左サイドを突き、2点目が生まれている。
冨安のワンタッチパスは、目立たないけれど非常に価値がありました。森保監督がよく言う「いい守備からいい攻撃」を実行するために、彼の存在は無視できません。
フィールドプレーヤーでは三笘薫が、ここまで出場機会がありません。ケガからの回復途上にある彼が、どのタイミングでピッチに立つのか。あるいは、出場せずに終わるのか。それもまた、ここから先の戦いのポイントにあげられるでしょう。