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「テラジの健康が心配だ」パンチをもらいすぎた寺地拳四朗に英国人記者が忠告「統一戦よりフライ級に昇級して」防衛成功も評価は“D”
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/01/26 17:01
判定の末、防衛に成功した寺地拳四朗(32歳)。顔の傷が激闘を物語っている
私は114-113でカニサレスの勝ちと見ました。ただ、寺地の勝ちになったこと自体には何の不満もありません。本当に激しいミックスアップが続き、幾つかのラウンドは採点するのが極めて難しかったのですから。多くのクリーンヒットを打ち込み、ダウンも奪ったカニサレスの手が上がったとしても、寺地は文句が言えなかったはずです。
エキサイティングなバトルだったことはすでに述べてきた通りですが、私は今戦での寺地の戦いぶりに落胆させられたことを否定しません。打ち気に逸りすぎで、かなり被弾しました。寺地は統一王者であり、地元選手でもあります。多くのアドバンテージを持っている経験豊富なボクサーであるにもかかわらず、相手を深追いし過ぎたのです。
「通常の寺地ならば、もっとスマートに」
寺地はカニサレスを軽く見積もっていたのかもしれません。前に出て、容易に圧倒できると考えていたような戦い方でした。通常の寺地ならばもっとスマートにアウトボクシングし、カニサレスを追いかけさせることもできたはずです。
最後の2ラウンドのようなアウトボクシングをもっと早い段階からしていれば、カニサレスは敵地でポイントを奪われてはなるまいと序盤ラウンドから強引に仕掛けていたでしょう。そうすれば、挑戦者は必然的に多くのミスを犯し、寺地はカウンターを取れていたと思います。寺地はそれをやらなかったために、1〜10回まで不必要なパンチを浴び続けることになったのです。
今回の寺地を見ていて私が思い出したのは、元WBAスーパー、IBF世界スーパーウェルター級王者ジャレット・ハード(アメリカ)です。ハードはスーパーウェルター級では巨漢で、小柄な選手を相手に耐久力、サイズ、パワーを武器に押しまくるような戦い方をしていました。そのやり方で統一王者になったのですが、徐々に消耗していった印象があります。
ハードと同じく、サイズで上回っていたカニサレス戦の寺地も無闇にパンチを交換し合い、ダメージを蓄積しているように見えました。