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「1億円超の大減収」でも野茂英雄は笑っていた…あのドジャース入団から29年、大谷翔平が受け継いだ「日本選手の未来を背負う」という覚悟
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/26 06:01
1995年2月13日、ドジャース入団会見でオマリー会長と握手を交わす野茂英雄
“前例なき挑戦”の難しさ
今では日米の野球環境の違いはファンでさえ知っている。投手ならば、滑るメジャー公式球、固く傾斜のきついマウンドへの対応。最大で時差が3時間ある広大なアメリカでは各地区で気候、湿度もまるで違う。そのための対応も多い。
打者ならば、メジャー投手の短い間合いから投げられる160キロ近い豪速球に対応しなければならない。そのためには、打撃フォームでは間合いを省く作業、フォームの時短が求められる。その上で自分のタイミング、強い打球を放つパワーを維持することは簡単なアジャストではない。
今ではこういったことは海を渡る前から選手は理解している。そのための準備もできる。だが、前例なき当時は野茂やイチローが肌で感じ、対応策を模索してきた。そして、彼らは経験を通じアジャストの道を探り出し、適応法を見つけ、後進へ光を灯した。ふたりの功績、そして背負った『覚悟』にはあらためて敬意を払いたい。
2人の決意を受け継いだ大谷翔平
今、大谷翔平は先駆者に感謝しつつ、メジャーで2度のMVPに輝いた。そして彼は今、後に続く者へと新たな道を残そうとしている。異次元であった二刀流という世界を身近なものへ。彼が切り開こうとする道は日本選手だけのものではない。野球を志す全世界の若者へと通じている。
未知数だった日本人選手の実力をメジャーで証明した野茂英雄とイチロー。ふたりの覚悟なくして日本人選手の今はない。そして、ふたりの志を引き継ぎ、更には全世界へと、選手が持つ果てしない可能性を伝えようとしている大谷翔平。これほどに誇らしいことはない。