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藤井聡太の八冠独占「もの凄く悔しい」…菅井竜也八段が明かす“強すぎる藤井八冠”への本音「今の状況は、ほとんど棋士として死んでいます」

posted2024/02/04 06:01

 
藤井聡太の八冠独占「もの凄く悔しい」…菅井竜也八段が明かす“強すぎる藤井八冠”への本音「今の状況は、ほとんど棋士として死んでいます」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

現在進行中の王将戦で藤井聡太に挑んでいる菅井竜也八段(右)。対戦前にその胸中を明かしていた

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北野新太

北野新太Arata Kitano

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JIJI PRESS

 惜敗の叡王戦から8カ月。菅井竜也八段は再びタイトルマッチに戻ってきた。鍛え抜いた振り飛車という拳で、八冠の牙城を打ち砕くために。藤井聡太との王将戦七番勝負に挑む闘志の男が明かしていた、その胸中とはーー。<全2回の後編/前編から読む>
 発売中のNumber1089・1090号掲載の[王将戦挑戦者の宣言]菅井竜也「座して死は待たない」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】

藤井聡太の八冠独占「もの凄く悔しい」

――叡王戦の後、居飛車党の佐藤天彦九段や豊島将之九段らA級棋士たちが指すなど振り飛車復権の動きもあります。

「でも、本当の勝負将棋で皆が振り飛車を指す時代はなかなか来ない気がします。昇降級や挑戦がかかるような将棋で本当に佐藤さんや豊島さんは飛車を振るのだろうか、と。今では皆が指せる指し方ではなくなったので、真似しようと思っても出来ないと思う。自分にはずっと振り飛車で戦っているんだという誇りもプライドもあります」

――昨秋、王座戦で現実になった藤井さんの八冠独占をどう感じたのでしょうか。

「藤井さんが残した結果はすごすぎますけど、自分は将棋ファンではなく棋士なので、凄いな、なんていう感情はなく、物凄く悔しい、自分はいったい何をしているんだろう、という思いだけでした。普段は人の将棋で勝ってほしい、と思うことはないですけど、王座戦に関しては永瀬(拓矢九段)君に勝ってほしいと思いました。同い年でもありますし。あの(逆転負けで失冠した第4局の)終わり方も、棋士であればどんな状況でどんなことを考えてミスが起きたのかは全部分かりますから」

――19期連続でタイトル獲得を続ける八冠を誰が止めるかが最大の焦点になっています。菅井さんには将棋ファンの期待も大きいし、自分が止める、勝つ、と。

「当然です。自分が座る可能性も十分にあった席を藤井さんに全部持っていかれたわけですから、ちょっとまずいな、何とか頑張らないといけないな、と」

――八冠を八冠たらしめている強さとは何なのでしょうか。

「才能という見えないものを言い始めても仕方が無いので、純粋に他の人よりも将棋の力が上、ということだけだと思います」

「今の状況は、ほとんど棋士としては死んでいます」

――弱点はなく、あらゆることに秀でていたとしても、突き詰めると終盤力が突出しているから、という見方は根強いです。

「確かに最終盤は強いです。強いだけでなく、相手に勝負を手渡す技術がありますね。長い攻防を続けて一分将棋に入ってお互いに全力疾走している中で、いきなり『後はあなただけで走ってください』と身を任せられて、相手が対応できなくなるような将棋を多く見ます。視野が広く、緩急の付け方が独特なので逆転が起きやすい。技術が高いだけでなく、技術とは違った部分での勝負勘が優れている。いい手ではないけれど勝負術になる、という手を最後の最後にやれる度胸もあるなと感じます」

――自分が全盛期を生きようとしている時代に藤井聡太という棋士がいることをどのように感じるのでしょうか。

「自分よりずっと後で棋士になった人に全冠を制覇されて、もちろん面白くはないです。今の状況としては、ほとんど棋士としては死んでいます」

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「対策できるほど藤井さんは甘くない」菅井竜也31歳が語った藤井聡太への強烈な思い…王将戦は「全く別物の戦い」「挑戦できるのは楽しみ」

【続きを読む】雑誌が読み放題のサブスク「NumberPREMIER」内の「座して死は待たない」菅井竜也(31)が抱く藤井聡太への強烈な思い…棋界の「緩さ」への苦言も《王将戦挑戦者ロングインタビュー》​で、こちらの記事の全文をお読みいただけます。

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