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「対策できるほど藤井さんは甘くない」菅井竜也31歳が語った藤井聡太への強烈な思い…王将戦は「全く別物の戦い」「挑戦できるのは楽しみ」

posted2024/02/04 06:00

 
「対策できるほど藤井さんは甘くない」菅井竜也31歳が語った藤井聡太への強烈な思い…王将戦は「全く別物の戦い」「挑戦できるのは楽しみ」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

現在進行中の王将戦7番勝負で藤井聡太に挑んでいる菅井竜也八段。対戦前にその胸中を明かしていた

text by

北野新太

北野新太Arata Kitano

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photograph by

Kiichi Matsumoto

 惜敗の叡王戦から8カ月。菅井竜也八段は再びタイトルマッチに戻ってきた。鍛え抜いた振り飛車という拳で、八冠の牙城を打ち砕くために。藤井聡太との王将戦七番勝負に挑む闘志の男が明かしていた、その胸中とはーー。<全2回の前編/後編へ>
 発売中のNumber1089・1090号掲載の[王将戦挑戦者の宣言]菅井竜也「座して死は待たない」より内容を一部抜粋してお届けします。【記事全文はNumberPREMIERにてお読みいただけます】

藤井聡太に「挑戦できる楽しみ」

 飛車を持つ指先を固く握る。

 菅井竜也は右拳を見つめている。

 クリスマスが近付く岡山の街。いつもは腕白な少年のように笑う男は、もう戦いの中にいた。

 錆び付いた有刺鉄線、工事現場の金網、高架下の匂い。冬の片隅にある暗所は戦い始める者によく似合っていた。

 王将戦七番勝負で藤井聡太との決闘に臨む盤上の闘士は言った。

「今の格闘家は筋肉ごとに筋力数値を計りながら鍛えますけど、ヒョードルは山に籠もって薪割りをして鍛えた。自分も、信じて薪割りをする側でありたい」

 今世紀初頭のリングで「60億分の1」に到達した皇帝のように、菅井は絶頂期を生きている。

――昨年の叡王戦以来の藤井さんとのタイトル戦になります。前回は1勝3敗という結果でしたが、第2局に完勝し、決着局は2度の千日手指し直しに突入する死闘でした。

「久しぶりのタイトル戦で緊張しすぎて、1局目で下血しましたから。対局が終わると同時に治ったんですけど。1勝3敗という結果は完敗でしたけど、手応えとしては悲観するものではなく、自分の振り飛車が十分に勝負できる感覚はありました。ただ、長い期間が空いてしまうと経験を生かしにくくなるので、なるべく時間を空けずにチャンスをつくらないといけないと思っていました。挑戦できるのは楽しみですね」

「平均点を取りにいく中途半端な手を指してしまった」

――叡王戦は1日制で持ち時間4時間でしたが、王将戦は2日制で8時間。舞台設定は大きく変わります。

「振り飛車で藤井さんに勝つには時間が長い方がいい。叡王戦では、もっと突っ込んで考えたい局面でも省いて指さなきゃいけない部分もありました。それでも十分に勝負できる手応えがあったので、2日制ならば、という思いはあります」

――叡王戦で見えた課題は。

【次ページ】 「振り飛車のことが最近少しだけ分かってきた」

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