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「被災した石川県のために…」石川代表・五島莉乃が全国女子駅伝で独走区間賞…笑顔で走りレース後に涙「速いだけじゃない、尊敬される選手」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byKYODO
posted2024/01/16 17:00
全国都道府県対抗女子駅伝の1区を区間賞で駆け抜けた石川県代表の五島莉乃
つらい状況の中でも気丈に振る舞う中高生たちを守り、報道対応をしたのがキャプテンでエースの五島だった。一つひとつの取材に丁寧にそして真摯に応じ、石川県への思い、チームの絆について話した。自分が話すことで、より多くの人に石川へ思いを寄せてほしい、関心を持ってもらいたい、そう考えているように見えた。
そして「笑顔で頑張りたい」という言葉を繰り返した。心にある悲しみや不安を拭い去ることはできない。でもレースでは笑顔で襷渡しをしよう。五島は朗らかな笑顔でチームを引っ張った。
石川県の深浦隆史監督は「(五島は)昔から明るいキャラクターで、中学生の時から変わっていないですね。後輩を気遣う優しい人柄で、緊張している中学生の子達に大丈夫だよ、という言葉をごくごく自然にかけられる素晴らしい先輩でアスリートです」と称える。
「単に速いだけじゃない。尊敬される選手です」
五島は中学2年生の時に初めて石川代表で全国女子駅伝を走り、今大会が11度目の参加になる。
「石川県は入賞をしたり、上位で争うようなチームではないんですが、(五島選手は)石川県チームで頑張ろう、と常に言ってくれる。中高生にとっては憧れですし、単に速いだけじゃない。尊敬される選手です」と深浦監督は愛弟子をこう表現する。
五島にとっても石川代表で走る駅伝は特別な意味を持つ。
「ずっと昔からお世話になってる先生方だったり、私の成長をずっと見届けてくれてる人たちと一緒に過ごす時間や地元の代表として走ることは自分の中ですごく大切なんです。1年で1回しかこういう機会はないですが、これが楽しみで、とてもうれしいんです」
大切な人たちと過ごした時間、走ったレースを胸に、五島は今後、大きな目標に挑む。パリ五輪での日本代表の切符を手にするために、5月の日本選手権に向け、これから厳しい練習に向かっていく。
「2024年は自分にとっても勝負の年になると思うので、目標をしっかり持って、ぶれずにやっていきたい」
ふるさとへの思いを胸に、五島莉乃は前に進んでいく。