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《このFWは誰だ?》天才・小野伸二の「いいパスをことごとく外した」元日本代表と「パスを出すのが難しかった」俊足ストライカーとは?
posted2024/01/13 17:01
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
Tomosuke Imai
小野伸二が明かす「最高のアシスト」
サッカー人生、最高のアシストは?
これまで何度も聞かれたであろう質問に、稀代のパサーは迷わず答えていく。1999年、プロ2年目の日本平での清水エスパルス戦。福田正博に合わせたスルーパスについてだ。
「あれは、なんだろう。強くもなく、弱くもなく、すごい綺麗で。左足だったんですけど、足元にしっかりと入って、福さんのスピードも殺さず。ただ、福さんのシュート見ました? あれめちゃくちゃ難しいですよ。それをいとも簡単に決めてくれたおかげで、僕のパスもすごいよく見えたんですよ。だから福さんのおかげなんですよ」
そう、そのパスがどれだけエレガントで、創造性に溢れていようとも、受けた相手が決めてくれないと、それは「アシスト」にはならないのだ。
「そういう意味では、僕の場合は決められていないパスで、いいパスとかたくさんあるんです。特に岡崎(慎司)とかね!」
会場は爆笑に包まれた。
「あいつは、ことごとく外してくれました。彼にはね、簡単なボールはダメなんですよ。難しいボールを出さないと(笑)。泥臭いゴールを決めるので、優しくしちゃダメなんだ、と」
野人・岡野へのパスがなぜ難しいのか?
これを聞いた司会の北條さんが思い出したのが、レッズ時代の同僚で、俊足を誇った岡野雅行とのエピソードだ。当時、小野さんが「岡野さんへパスを出すのが難しい」とこぼしていたという。
「岡さんはとにかくスペース。もう絶対に届かないっていうところに出せ、って。でも難しいんですよ。なんにもないところには蹴れないじゃないですか。それは一番難しい要求で。(そんな人は岡野さんだけ?)そうっすね(苦笑)、いないですね」
ジョホールバルの歓喜で主役となった男は、小野伸二でさえパスを出すのが困ったストライカーだったのだ。
「要求の仕方が難しかったですよね。あそこに出してくれって。いやいや、無理だなって。普通はミスキックになりますから。でも、追いつくんですよね、あの人。びっくりですよね」
その他にもトークショーでは様々なことを語ってくれた。
・トークショー前日に発表された遠藤保仁の引退について
・清水商業時代の「すっぽん」の思い出
・「黄金世代」で挑んだ1999年ワールドユースがなぜ楽しかったのか
・現役生活を締め括った札幌で出会った指揮官ミシャへの思い入れ
今後は、自身が影響を受けたセルジオ越後さんの活動のように、日本全国を回って子どもたちに「サッカーの楽しさ」を伝える活動をしていきたいという。「天才」と呼ばれたMFが、引退後どのように日本サッカーに携わっていくのか、これからも目が離せない。
【全編はこちら】トークショーの動画は、雑誌ナンバーの記事がすべて読めるサブスクNumberPREMIERの《アーカイブ動画》小野伸二「楽しくてやめられないサッカー人生だった」からご覧になれます。