猛牛のささやきBACK NUMBER
「航空写真で見るとつながっているみたい…」山本由伸の“お隣さん”オリックス・頓宮裕真が多くを語らなかった幼馴染への思い「ずっと一緒に…」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2024/01/15 17:00
昨年5月13日のソフトバンク戦で勝利し、お立ち台に上がった“お隣さん”の山本由伸(左)と頓宮
その後も山本の登板日によく打った。いや、山本の登板日に限らず、昨年の頓宮は打ち続けた。打撃の確実性を増し、パ・リーグの打率トップに立ち続けた。
「最後のチャンス」で獲ったタイトル
9月20日にリーグ優勝を決めた試合後の記者会見で、タイトルについて聞かれた頓宮は、「ゴールデン・グラブですか?」ととぼけ、並んで座っていた中嶋聡監督や山本はくすくすと笑った。
その会見後、ビールかけ会場に取材に向かうと、会場の外で待機していた頓宮に、「携帯持ってますか?」と声をかけられた。
ビールまみれにならないように、自身のスマートフォンはロッカールームに置いてきたようだ。写真を撮って欲しいのかと思い、筆者がスマホを取り出すと、真剣な顔で聞かれた。
「今日、近藤(健介)さんと柳田(悠岐)さんどうなってます?」
2人は打率で頓宮に迫っていた首位打者争いのライバル。
「いや、めっちゃ気にしてるやん」とつっこみそうになった。
左第4中足骨疲労骨折が判明し終盤戦は出場できなかったが、規定打席は満たしており、2人の追い上げをかわして打率.307で初めて首位打者のタイトルを獲得した。
「メジャーへの興味は?」
シーズン後にはベストナインにも選出され、11月28日に行われた「NPB AWARDS 2023」では、史上初めて3年連続で投手4冠(最優秀防御率、勝率第1位、最多勝利、最多三振奪取)と沢村賞、パ・リーグ最優秀選手賞(MVP)を総なめにした山本と同じ舞台で表彰を受けた。お隣さんが揃ってタイトルを獲るとは、これまた快挙だろう。
「今年あいつは最後なんで。獲れてよかったです」と頓宮。
その後、山本はドジャースと12年総額3億2500万ドル(約470億円)という超大型契約を結んだ。
山本のポスティング移籍が承認された時、頓宮は「全員寂しいと思いますけど、頑張って欲しいです。もちろん活躍すると思います」とエールを送っていた。
頓宮に「メジャーへの興味は?」と聞くと、「考えないです。無理です」と即否定する。
「僕なんか……。自信ないですもん。(吉田)正尚さんを見てるんで。森(友哉)さんも見てますし。レベルが違います。近づいていけるようにはしたいですけど、持ってるもんが違います」
いずれ視界が変わることもあるかもしれないが、今は地に足をつけて、大エースが抜けたオリックスをバットで支えていく。