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菊池雄星「身近に大谷翔平。佐々木朗希くん、麟太郎くんもこれから…」岩手に巨大施設、考案した菊池が語る「息子とキャッチボールする場所が…」
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byGetty Images
posted2024/01/02 11:05
オフの忙しい予定の合間に、菊池雄星が新しいプロジェクトについて話してくれた
「これだけやったんだから結果は出ると思えていたんですよね。やってきたことをやるだけだって。開き直りみたいなものはありました」
もちろん、ただ開き直るだけで活躍できるほどメジャーの舞台は甘くない。自身の課題に着目し、そこに向き合った。その課題とはコントロールで、ストライク率を上げることを掲げ、克服したのだ。
「シアトル(マリナーズ)時代に、ジェイミーモイヤーのエピソードを聞きました。『1年間でAゲームが5試合、Cゲームが5試合ある。この10試合は、Aゲームは何をやっても勝てるし、Cゲームはどう頑張っても打たれる。俺は残りの25試合のBゲームをマネジメントしたからこそ200勝できた』。僕に必要なのは、Bゲームのクオリティをしっかりと上げることだと思った」
「“頑張る順番”を伝えていきたい」
菊池には常に大きな壁が立ちはだかり続けてきた。一度乗り越えるとまた次の壁がやってきて、それでも諦めずに乗り越えようと努力する。その結果、今の活躍がある。KOHの構想もおそらく菊池を一回り大きくするきっかけになるのだろうと思う。
「もともと、僕が練習したいがために作った施設なので、みんな遊びに来てよっていうノリなんですよ。ただ見に来るだけじゃ楽しいだけだし、『野球の楽しさ』って勝つことであったり、上手くなることだと思うんです。その上手くなり方だったり、頑張り方。“頑張る順番”みたいなものは伝えていきたいなと思います。
この施設からプロ野球選手やメジャーリーガーが出てくるようになって欲しいというのが一つのゴール。それと岩手県から日本一。花巻東が日本一になってくれたら嬉しいけれど、この場所を全ての高校に使ってもらいたい。14年前(2009年)に高校野球でこんなに岩手が盛り上がるんだ! 喜んでもらえるんだ! というのを見た人間として、是非、この施設を通して県民の悲願の力になりたい」
そして最後にこう結んだ。
「僕は、根は社交的なんですけど友達が多いタイプではありません。そのぶん、一度友達になったらとことん仲良くなりたいし、一生付き合うつもりでいます。それは今回のKOHもそうで、岩手の人たちと、とことん向き合いたい。それが僕の生き方なのかもしれない」
悩み、葛藤して、成功を収めた。
King of the Hillには、一人の選手の野球人生が体現されている。