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佐々木麟太郎18歳のアメリカ行き「悲観する声」のナゾ…高卒→留学した元球児が証言する“アメリカで見た”日米ドラフト候補の決定的な違い
posted2023/10/13 17:01
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
噂は筆者の耳にも入っていた。
それは甲子園の決勝戦が終わって間もない頃の8月下旬。「今秋のドラフト1位候補・佐々木麟太郎選手が米大学留学を考えている」という話を聞いたのだ。
大学かプロか…割れていた評価
そもそも、佐々木の進路に関しては賛否両論があった。
打席に入れば凄まじい打球を連発するスラッガーだが、守備・走塁面には難がある。バットが金属から木製に変わることを考慮しても、進路は大学にすべきという意見があり、高卒プロが既定路線というわけではなかった。
そんななかでのアメリカの大学に留学という選択は“想定通り”といえないとはいえ、花巻東らしい、もっと言えば同校OBに倣うような「勇ましい挑戦」であることは間違いない。
「2大スターを生んだ」花巻東の歴史
思えば、花巻東は“挑戦”がテーマであるように思う。
監督である佐々木洋は若い時から、「甲子園出場」を目指してきた指導者だ。目標を立て、その実現には何が必要か。そのプロセスを体現し、得た体験を選手に伝え、教え子たちも目標に向けて邁進した。
2009年夏の甲子園に同校エースとして出場した菊池雄星(ブルージェイズ)は、「高卒でメジャー球団入団」を目標にしていた。ドラフト前には日米20球団と面談を行い、夢の実現まであと一歩のところまで到達した。彼の3歳下の大谷翔平(エンゼルス)はストレートの最速160キロ到達を目標の一つに掲げた。グラウンドの練習から、トレーニング、普段の生活に栄養面まで。目標を意識した行動をすることで「限界突破」を果たしていこうというのが、花巻東だった。
2021年には菊池、大谷が揃ってメジャーリーグのオールスターに選出されるという、信じがたい偉業を達成。さらに大谷は同年にMVP、今年はホームラン王のタイトルを獲得している。一方の菊池も今季、大谷より先にプレーオフでの登板を果たした。
彼らの行動には常に目標設定がある。そこに「限界」は存在せず、だからこそ、前例にとらわれない選択ができるのであろう。
懐疑的な声はなぜ挙がる?
10月12日に日刊ゲンダイが報じた記事によると、佐々木麟太郎は国体1回戦で敗れた際の取材で、こう答えたそうだ。