欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
久保建英が悶絶「腹にパンチ+プロレス技」の暴挙、だが観客席には「クボとソシエダに恋した」親子が…現地で見た“南スペインの情熱と闇”
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/12/28 17:02
2023年、進境著しかった久保建英。しかし今年の最終戦でルベン・アルカラス(4番)の“暴力的なマーキング”に苦しめられた
前半、久保にパンチを食らわせていたアルカラスがまたも久保への対応に遅れ、かわされざまの暴挙だった。
試合はそのまま終了、ソシエダからカディスへレンタル移籍中のナバーロとの交流などもあったが、年内最終試合を納得のいかない不本意な形で締めることになってしまった。
これでソシエダは直近3試合(CL含めて)がスコアレスドローとなった。中堅を目指すなら守備陣の堅守が光り、苦しみながらも勝ち点1を積み重ねていると取れるが、上位を目指す上では、攻撃陣の得点不足解消は急務になる。次節ソシエダは、年明け1月2日にホームでアラベス戦を迎える。
シェリー酒の一大産地を訪れてフラメンコを
試合翌日には、カディスから電車で30分ほどのヘレスという街を初めて訪れた。
〈Vino de Jerez=ヘレスのワイン〉ことシェリー酒の一大産地である。
年内最終撮影を終えてちょっとゆっくりくらいに考えていたら、すでにクリスマス休暇が始まっている人は多く、夕方前から街に人は溢れていた。
地元の人で賑わう人気のバルは、団体客が多く、1人ではちょっと店に入るのも躊躇ってしまう……。ふとした瞬間に、フラメンコのリズムをとる手拍子がそこら辺のテラス席から聞こえてくる。
ヘレスには、タバンコというシェリーやワイン、つまみを楽しみながらフラメンコを楽しむことができるお店があるという。
この地独自のもので、なんとか体験してみたい——その一心で、ぎゅうぎゅうの客を掻き分け中へ進む。
セビージャなどでフラメンコのステージは見たことがあったが、チケットを購入して観覧するものだった。
ここでは、2ユーロほどのビールやシェリーのみで観覧することができる。ステージは小さく、踊り手、歌い手、ギタリストの3人でいっぱいになる程。
ただ間近で見る情熱的な踊りに掠れた歌声、客席から飛ぶ合いの手が絡み合い、シェリーを啜る手を止めて見入ってしまう。
久保にとってはいい迷惑であるのは間違いないが…
ここで愛されるサッカーはやはり情熱的なものなんだろうな、などと頭をよぎる。
暴力的なプレーを肯定する気は勿論ないが——行き過ぎた情熱が間違った方へ向かうこともある。
久保にとってはいい迷惑だろうが、久保が活躍すればするほど相手のマークは厳しくなる。久保対策も当たり前のようになり、シーズン序盤の勢いはやや落ち着いてしまっている。
それでも、久保包囲網を易々と掻いくぐり、相手に触れさせることなくプレーする。そんな久保の姿を目にして、写真に収める日もきっと遠くはない。
ちなみに辛口と甘口くらいしか知らなかったシェリー酒の世界は、ペドロヒメネスという甘口からフィノという辛口までの間に10種類ほどに分類されているとか。
色味や匂いもバリエーションが豊富で、とても全部を試すことはできなかったほど。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。