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「大谷翔平の存在がなくても…」山本由伸はなぜドジャースを選んだのか?「大谷の陰に隠れたくない? いや、違うな」記者が確信を抱いた瞬間 

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阿部太郎

阿部太郎Taro Abe

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photograph byNanae Suzuki

posted2023/12/26 11:04

「大谷翔平の存在がなくても…」山本由伸はなぜドジャースを選んだのか?「大谷の陰に隠れたくない? いや、違うな」記者が確信を抱いた瞬間<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

投手史上最高額となる12年3億2500万ドル(約460億円)でのドジャース入りが報じられた山本由伸。契約の決め手はどこにあったのか?

 交渉を進める過程で、ドジャースとは違う選択肢を選ぶ可能性もあっただろう。だが、日本の選手は往々にしてお金だけでは動かない。憧れが勝る。

 山本は最後にはドジャースを選ぶだろうという推測はあった。“絶対にブレない男”だからだ。

「己の意志は曲げない」番記者が見た山本由伸

 オリックス時代、プロ1年目のオフに投球フォームを変えた。スライダーを投げすぎて肘を痛めたのがその理由だった。このままでは怪我をする、持たないと感じたのだという。だが、1年目である程度、結果を残していた山本は周囲の猛反対にあった。その時、まだ19歳。普通ならば断念してもおかしくないが、山本は鋼の意志で、体の仕組みや痛みが出ない動きを考えて導き出したフォーム修正を貫いた。そして、日本では無双の投手に成長していった。

 以前、山本はこんなことを話していた。

「いろんな意見を聞いて自分がいいと思ったら、それをやり続けるだけですね」

 1年目で軸としていたスライダーは肘の負担を考え、試合中の“ここぞ”という場面でしか投げなくなった。高校の時に、先輩にツーシームとして教わった「スプリット」が代名詞になった。

 己の意志は曲げない――オリックスの番記者として取材していた時から、そんな芯の強さをひしひしと感じていた。

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を地でいく謙虚さ

 その一方で、自分のエゴを優先して、チームメートとぶつかったという話は聞いたことがない。

 若くしてスターダムに駆け上がっても、調子に乗るどころか、謙虚さが際立った。車に乗って京セラドーム大阪の地下の駐車場に現れ、記者団を見つけると、帽子をとって頭を下げて挨拶していた姿を何度も見た。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」を地でいく。

 オリックス時代のチームメートで、2022年に現役を引退した鈴木優さんはこう語る。

【次ページ】 「陰に隠れる」ことを気にするような選手ではない

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