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大谷翔平が発言“彼が去ったら”ドジャース契約が崩れる…“天才”フリードマンとは何者?「28歳でメジャーGMに」「日本人記者に逆質問も」
text by
水次祥子Shoko Mizutsugi
photograph byGetty Images
posted2023/12/21 17:00
大谷翔平とアンドリュー・フリードマン編成本部長
前田健太の通訳を“驚きの抜擢”
日系アメリカ人の父とフィリピン人の母を持つウィルは、少年時代まで東京で過ごし高校と大学はアメリカで学んだため、日本語と英語が堪能。かつてはレンジャーズ傘下のマイナーに所属してた選手経験があり、WBC予選大会に参戦したフィリピン代表に参加し、編成にもかかわったこともある。その経歴と堪能なバイリンガルだったことが採用の決め手になったのだろう。
しかも人当たりが良く礼儀正しい性格で、前田と良い関係を築いていただけでなく、当時前田を取材していた日本の記者たちもみんなウィルが大好きだった。チームが打撃練習をしている間に選手に交じって外野で球拾いもしていたが、スライディングやダイビングキャッチをやってのけ、とても通訳とは思えないくらい懸命に打球を追いかけた。仕事に対しても真面目で、ウィルなら通訳として末永くやっていけるだろうと思っていた。
ところがあるとき突然、ウィルがいなくなった。ドジャースの他部署に異動したと知ったのは、後になってからだった。今は「パフォーマンス・オペレーションズ・マネージャー」という、フリードマン氏がウィルのために特別に創設した役職についている。トラックマンなどの先端機器を使い、データ分析を駆使して選手がフィールド上でパフォーマンスを向上させるために必要なサポートをするのが仕事だ。どんなことも誰よりも一生懸命に取り組むウィルに、フリードマン氏はかつて「ウィル・ザ・スリル」というニックネームをつけたこともあった。今年2月にフリードマン氏ら球団幹部一行が侍ジャパンの視察のため来日していたが、その視察団にはウィルの姿もあった。そんな重要な役割を担うほどの立場になっていることに正直、驚いた。MLBで通訳からそこまで抜擢されるケースは非常に稀だと思う。