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捕手専念で来季年俸1億円突破のカープ坂倉将吾を、捕手一番手に導いた「光のような存在」とは
posted2023/12/18 11:02
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PRESS
広島の新しい光となることが宿命付けられた。12月6日、マツダスタジアムで契約交渉を行った坂倉将吾は3000万円アップの1億2500万円(金額はいずれも推定)で更改し、球団捕手3人目、最年少での1億円突破となった。
「7年終わったので、ここまで来られてよかったなというホッとした気持ちになっています」
2017年に日大三高からドラフト4位で入団して、打者としては1年目からプロ初安打を放ち、5年目の21年にはリーグ2位の打率.315をマークと、順調な成長曲線を描いてきた。だが、捕手としては紆余曲折をへて、ようやく軌道に乗ろうとしているところだ。3年目の19年まで先発マスクは1度もなく、20年にようやく先発マスクを被り、捕手としての出場数を増やしながらも、21年は一塁と併用。22年は三塁を主戦場とした。
捕手専念でのつまづき
新井貴浩新監督が就任した今年、再び捕手に専念することが決まり、開幕から正捕手として起用された。他球団で見られるようなベンチから捕手に配球のサインを出すことはどんな局面でもなく、試合終盤に経験ある會澤翼を抑え捕手として投入することもしない。新井監督をはじめ、藤井彰人ヘッドコーチ、石原慶幸バッテリーコーチは目の前の試合だけでなく、チームの未来を見て、捕手坂倉を起用してきた。
正捕手としての第一歩ではつまずいた。初めて開幕マスクを任されながら、チームは開幕4連敗。スコアは0−4、0−1、2−3、4−5と大敗した試合はなく、バッテリーが壊した試合もなかった。チーム初勝利は、ベンチスタートとなった4月6日の阪神戦。6回表途中に降雨コールドで得た今季初勝利は、會澤が組み立てた88球がもたらしたものだった。
「結果第一の世界。勝ったという事実がすべて。でも、4連敗していたので、僕も救われた。気持ちにちょっと余裕ができました」
冷たい雨粒はベンチの坂倉も濡らしたが、坂倉の目と心は降雨の影響も感じないほど冷静かつ、ニュートラルな視点でグラウンドを俯瞰していた。