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「ダルビッシュがいける。でも…」WBC決勝、前代未聞の継投秘話…戸郷翔征が「生涯初めて投げた一球」高橋宏斗は「ブルペンで何度もトイレに」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/12/07 17:06
WBC決勝、クローザーとして世界一のマウンドに立った大谷翔平のもとに集まる侍ジャパンの選手たち
「ツーシームですね。試合で初めて投げました。その後は日本でも投げていない。日本のボールだと変化が少ないけど、WBCのボールだと凄くいい変化をしていたので、この1球だけ使いました。自信はあったし、内角を抉れればいいと思った」
生涯たった1球しか投げていないツーシーム。これが三塁方向へのファウルとなって追い込むと、最後は内角低めにフォークを落とし、空振り三振でピンチを脱した。
戸郷が4回を三者凡退に退け、予定の2イニングを無失点で切り抜けると、次にマウンドに上がったのはチーム最年少、弱冠20歳の高橋だった。
実は高橋がこの試合で“爆弾ゲーム”の参加者になると知らされたのは、試合開始5時間前、トレーニングルームでストレッチをしている最中だったという。
「これ見といてや! 順調にいけばこの順番でいくから!」
吉井コーチがこう言って投手の名札が貼られたホワイトボードを回してきた。
「それを見て初めて自分が投げることを知ったという感じでした。自分の中ではないかなと思っていたので、『ここできたか……』と。めちゃくちゃ緊張しました」
「トイレに行ったらブルペンが騒ぎになって…」
ブルペンで投球練習をしていても足が震えるのが分かったという。
「宏斗が一番、緊張して、ブルペンで何度もトイレに行っていました」
こう証言するのはボールを受けた鶴岡だが、実は高橋は登板直前の4回の岡本和真の本塁打も見ていなかったのだという。
「トイレに行っていたらブルペンが騒ぎになって……。『どうしました?』って聞いたら岡本さんがホームラン打った、と。あの一発が自分自身を凄く楽にしてくれたし、あと2、3点は取ってくれるんじゃないかという気持ちでマウンドに行けました」
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