「松本（匡史・元巨人）の後ろにいるのが将来、プロで活躍するだろう岡田だから、ノックを打ってやってくれって伝えたんです。するとOBたちが〈僕がノックしましょう〉と次から次に100本ずつのノックの雨を降らせた。1年生はグラウンド整備をやって昼ごはんを食べる。その合間もないから、普通ならひっくり返るはずだけど、岡田は〈ここは俺のポジションだから〉って……」

　石山はサードの周りを整備している岡田の姿を懐かしむ。一方、佐々木はグラウンドで岡田がどこにいるか、一目で確認できたという。

「午前中にレフトのノックを受けて、午後はヘトヘトになっている。でもサードにいたら〈お前が岡田か〉って感じで、またノックを浴びていた。遠くから見ても前も後ろもユニフォームが真っ黒で、それが岡田だってわかった。タフだったんです」

　石山もその根性に驚いた。

「こいつはどんなことにもへこたれない男だと。秋はレギュラーで使うと決めたんです」

「ホームランを打てよ」って言ったらホントに…

　秋のリーグ戦、岡田は開幕カードの立教戦では2試合ともノーヒットに終わった。それもあってか上級生は岡田起用に疑問を唱える者もいたというが、石山は譲らなかった。その期待に岡田は応える。法政の江川卓との初対戦で3安打するなど、最終的には岡田がただ一人、早稲田の中では打率3割台の成績を残した。2年春からサードに定着。3年からは4番が不動の打順になって、打撃記録を積み重ねていく。

早大時代、スイングをかける岡田　©Shinichi Yamada/AFLO

　佐々木が痛烈に覚えているのは、岡田が放った“予告ホームラン”だ。

「二度ぐらい〈ホームラン打ってきます〉って言って、実際に打っているんです。たしか、明治の高橋三千丈（元中日）からでした。〈私が出るからホームランを打てよ〉って言ったら、〈はい〉って答えた。そして私が二塁の塁上にいたら、本当にきれいな弧を描いた打球がスタンドに吸い込まれました」

　佐々木たちが4年生、岡田らが3年生の春季リーグ戦は明治に負けたものの、秋は鹿取（義隆・元巨人）、高橋を打ち崩して勝ち点を得る。最終週は8勝1敗同士で並んでいた慶応を破って、岡田にとって初の優勝を飾った。

　その中で1学年下の片桐幸宏も、予告ホームランに驚かされた1人だ。

「たしか早慶戦でした。ホームランを打ってくると言って、ホントに打っちゃうんですからね。〈ボールが見えてなかったけど、前の打席でだいぶ見えてきた〉って言っていました（笑）」

岡田の1学年下だった片桐さん　©Takeshi Shimizu

ボールじゃなくてバットがこっちに飛んでくる感じ

　片桐は76年夏の甲子園、西東京代表で初出場初優勝を果たした桜美林で主将を務めていた。そんな看板を背負って早稲田に来たが、1学年上である岡田のプレーを見て「比べるも何も、太刀打ちできるものは何もなかった」という。

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