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「弟(KID)は自分からやめるとは言わないタイプ。でも…」山本美憂(49歳)が明かす、引退発表“本当の理由”「自分にしかない人生の歩き方でした」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/12/01 11:06
大晦日の引退試合へ向け、単独インタビューに答えた山本美憂
「遊んでいても、友だちのほうから“美憂は練習あるでしょ。行ってきなさい”と言ってくれましたね。そういう生活をしてるんだ、他の人とは生活のスタイルが違うんだっていうことを理解してくれてました」
そう言えるのは、誰よりも自分自身が“山本美憂の生き方とはこうなのだ”という意識を持っていたからこそだろう。もちろん、練習が嫌だった時期もある。「毎日毎日ハッピーというわけにはいかないですよね」と美憂。
「それでも好きなことができるのは幸せでしたね。“これができなかったな”という思い残しは何もない。ずっと選手ができている環境だったり、自分の体力だったり精神だったり、全部含めて世界一ラッキーなアスリートだなと思ってます」
引退を決めた理由「弟は自分からやめるとは言わない。でも…」
ここまで体と気持ちがもったのは、自分の努力と能力によるものだけではないと感じている。
「体もメンタルも、いま自分が持ってるものすべては神様に与えられたものでもあるので。そこはラッキーだったんです」
引退を決めたことに“これ”という大きな理由があるわけではないという。ただその時期が来たと感じた。
「来年どうしていこうみたいなことを、100%の気持ちで考えることができなかったんですよね。それにジムの選手たちを見ていかなきゃいけないし、家族との時間も大事にしたい」
現役選手として闘うのは、自分最優先の時間を過ごすということでもある。そういう生活から離れることにしたのだ。
「引退については、あえて言わなくてもいいかなという気持ちもあったんです。弟(KID)はそういうタイプでした。自分からやめるとは言わないと。でも、いきなりいなくなっちゃうのもどうなのかなって。
これだけみんなに応援してもらって、RIZINのみなさんにも舞台を作っていただいて、なのにある日突然“やめます”じゃないなと。これが最後ですとはっきり伝えて、みなさんに見届けてもらえたらと思います」
悪戦苦闘し、強くなってきた美憂
対戦する伊澤はMMA無敗の26歳。RIZINでは6連勝中で、そのうち4試合でフィニッシュ(一本・KO)している。美憂は引退試合でキャリア最強の相手と闘うことになるが、臆するところはない。
「とにかく自分の試合をします。好きに暴れて、帰りの電車や車の中で“山本美憂の試合が一番よかったね”って振り返ってもらえるような試合がしたい。勝ちにいくし、自分らしく闘いたいです」