濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「弟(KID)は自分からやめるとは言わないタイプ。でも…」山本美憂(49歳)が明かす、引退発表“本当の理由”「自分にしかない人生の歩き方でした」
posted2023/12/01 11:06
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
女子レスリングのパイオニアであり、近年はRIZINでMMAに取り組んできた山本美憂が引退する。
最後の舞台は大晦日の『RIZIN.45』さいたまスーパーアリーナ大会。対戦相手はRIZIN女子スーパーアトム級チャンピオンの伊澤星花だ。美憂の負傷で一度は流れたが、回復を待ってあらためて実現することになった。
父はミュンヘン五輪レスリング日本代表の山本郁榮氏。弟はMMAで日本トップの強さを見せた山本“KID”徳郁で、妹は山本聖子。息子の山本アーセンもMMAファイターだ。
現在はグアムで夫のカイル・アグォンとともにトレーニングに励む。11月24日のカード発表会見もグアムから“来日”。大晦日の大会も、公式スケジュールに間に合うギリギリのタイミングでの到着になりそうだ。時差があまりないからそれで問題ないし、逆に寒暖差があるのでグアムで調整したほうがいいようだ。
49歳とは思えない驚異的な肉体
「グアムは一年中暑いので。気温の変化がない分、練習はしやすいかもしれないです」
会見後のインタビューでそう語る美憂。確かにきれいに日焼けしている。引き締まった腹筋も印象的だ。あらためてプロフィールを調べてみると1974年生まれの49歳。驚異的なグッドシェイプだ。
「やっぱり暑いからか、なかなか体重は増えないですね。今も軽いほう。グアムのおかげですね」
もちろん食事にも気を遣っている。ジャンクフードはできるだけ食べないし「食べたとしても次の日の食事でうまく調整してます。それが自然な習慣になってるんですよ」。
カナダに住んでいた頃、周りの選手たちが健康的な食事に意識的だった。「それがちゃんと美味しいし、量も“こんなに食べていいんだ”っていうくらいあって」と美憂。
レスリングを始めた小学生の頃から、環境そのものがアスリート向けだったのかもしれない。以前、郁榮氏の取材で聞いたことがある。山本家の子供たちのおやつは器に山盛りの豆や小魚だったそうだ。
「そういえばそうでしたね、ちっちゃい頃」
「世界一ラッキーなアスリートだなと思ってます」
人生の大半を“選手”として過ごしてきた。そのために犠牲にしてきたものもあったはずだが、後悔は何もないという。
「基本的に好きなので、レスリングも格闘技も。ひたすら好きなことをやってきた人生だと思います」
学生時代から練習三昧の日々を過ごしてきたことを振り返って「放課後に友だちと遊んだりしてみたかった」と言う選手もいる。美憂はそうではなかった。