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「藤井さんは勝つこと以上に…」佐々木大地七段が明かした藤井聡太との“12番勝負”の真相「チャンスはもう多くない。だから今回は本当の勝負だと」
text by
北野新太Arata Kitano
photograph by日本将棋連盟
posted2023/11/26 17:00
佐々木大地(右)にとって初のタイトル戦となった藤井聡太との棋聖戦第一局の模様。佐々木大地七段が藤井聡太とのダブルタイトル戦“12番勝負”の真相を明かした
もう晩秋を迎えたのに、都心の最高気温は21.4度まで上がった。
10月28日、東京湾を望むカフェテラスに射す陽光にはまだ夏の名残があった。
戦い終えた佐々木に尋ねた。
あの夜、なぜ笑わなかったのか。
「あの時から……勝とうと思っていたからかもしれません。藤井さんは年齢的にまだこれからですけど、自分は今が全盛期なのかもしれない。あと5年……もあるか分からないけど、実現しないと失われてしまうという思いがありました。チャンスはもう多くはない。だから今回は本当の勝負だと」
5カ月前、棋界を包んだのは大舞台に辿り着いた者への祝意と漠然とした期待感だったが、当事者の覚悟は違っていた。巡り来た好機に番狂わせを起こし、世界を変えようとしていた。
「もちろん、途中で散々負けてきたので挑戦まで結びついたのは大きなことでした。でも、自分もまだ伸びるとは思いますけど、きっと藤井さんの方がスピードは速い。10年後の自分はきっとボロボロになっています。羽生世代の先生方みたいに40を超えて自分が加速するとは思えないんです」
「藤井さんは勝つこと以上に真理を追究しようとされている」
大舞台での不敗を今も継続し、負けないことが当たり前になった男に勝つのは自分なのだと誓っていた。
「藤井さんは対戦相手によって研究や指し方を変えることはしないと話していますし、勝つこと以上に真理を追究しようとされている。今ならば、付け入る隙もあるのではと思ったんです」
第94期棋聖戦五番勝負
6月5日─7月18日 1勝3敗で敗退
第64期王位戦七番勝負
7月7日─8月23日 1勝4敗で敗退
王者に挑んだ真夏の十二番勝負は9局で終焉を迎えた。スコアが示すより熱戦続きで、代名詞の先手番相掛かりで2勝する見せ場も作ったが、盤上で体感したのは一局を貫く藤井のクオリティだった。
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