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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「もう、どうしていいか分からない」DeNA・細川成也を救った“中日からの指名”「現役ドラフトがなかったら、人生を変えられていなかった」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byHaruka Sato
posted2023/11/18 06:02
今季140試合に出場し、24本塁打を放った細川。真価を発揮した和製大砲が昨年の「現役ドラフト」までを振り返る
「ある程度三振も減ってきて、率も残るようになって。振り返れば、プロのピッチャーに慣れるまでの時間というのが、大事だったのかなと思います。生きたボールへの対応や、変化球に対して我慢できるとか、そういうところですね」
次は一軍で飛躍を……。誰もがそう期待した次の段階で、細川はまたも壁にぶつかってしまう。21年シーズンは自身初の開幕一軍入りで迎えたものの、11打席連続無安打で二軍落ち。その後も一軍昇格のチャンスを掴んでは、結果を出せず二軍に逆戻りすることが続いた。
焦りから「ヒットを打ちに行った時もありました」
「代打では、その1打席で結果を残すということが自分にとっては本当に難しかったです。ヒットを打たないと抹消されますし、また二軍落ちか、というのを何回も繰り返していたので。野球を楽しむなんていう気持ちは全くなくて、絶対結果を出さないといけない、この打席で、この打席で、と焦るばかりでした」
プロ6年目の22年は、7月に本塁打を放ったものの一軍出場18試合で打率は.053。細川と同い年で、大学を経てプロ入りした牧秀悟は、1年目からベイスターズの主軸を担っていた。振り返れば、二軍には自分より若い有望株がひしめく。かつての「シンデレラボーイ」は、いつの間にかその持ち味である思い切りのいいスイングを失っていた。
「コーチや、先輩からはずっと『振れなくなったらおしまいだよ』って言われていました。僕みたいなタイプは自分のスイングを消しちゃいけない、って。でもずっと一軍で結果が出ていなかったので、なんとか当ててヒットを打とう、なんとか“Hランプ”をつけなきゃという気持ちが強かった。(当てにいって)ヒットを打ちに行った時もありました。もう、どうしていいか分からないという時期も多かったです」
失われたスラッガーとしての本能。ラストチャンスと胸に期した中日で、運命の出会いが細川の道を切り拓く。その心を救った立浪和義監督のある一言とは-−。